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引退を決意 ミスター社会人・西郷泰之、波瀾万丈の野球人生

 

25年に及ぶ社会人野球人生にピリオドを打った。ホンダ・西郷泰之内野手が11月25日、埼玉県内の同社で記者会見を開き、現役引退を表明。都市対抗野球で個人最多タイ14本塁打を放つなど「ミスター社会人」と呼ばれた男は、今年8月で43歳。準優勝に輝いた11月の日本選手権後に、厳しい現実が待ち受けていた。
取材・文=岡本朋祐

社会人野球の最大の祭典である都市対抗では、補強を含めた4チームで史上最多6度の優勝を経験している。写真は00年、三菱ふそう川崎で大会4本塁打を放ち、橋戸賞(MVP)を受賞



指揮官もつらかった通告


 社会人野球にも「戦力外通告」がある。チームによって前後はあるが、選手登録は30人前後。その枠内で運営していくため、新入社員が採用される場合は、既存のメンバーがユニフォームを脱がなくてはならない。シーズン最後の公式戦である社会人野球日本選手権(京セラドーム)。ホンダは日本生命との決勝で惜敗し、惜しくも優勝を逃した。それから9日後(11月18日)、長谷川寿監督との面談で、43歳の超ベテラン・西郷泰之に、まさかの通告が下された。

「監督のほうから2016年の構想には入っていない、と。チームとして必要ないんだと思うと、寂しさ、悔しさがありました。野球が好きで、できることならば、ずっとプレーしていたかった。ただ、チームの方針もあるし、現場から求められていないのならば、受け入れるしかない」

 社会人25年目の今季は覚悟のシーズンだった。昨年、西郷は打撃コーチ兼選手と立場が変わった。しかし、本人の強い意向により、今年は再び選手専任にカムバックしている。

 西郷には「監督にも(選手専任を)お願いして、何とか達成したかった」とこだわりを持っていたのが、都市対抗での個人通算本塁打記録の更新であった。12年の1回戦(対TDK)で、新日鐵名古屋・杉山孝一と並ぶ14本塁打を放って以降2大会、柵越えはなし。今夏も2度の代打出場で、結果を残せなかった。

 しかし、西郷の心は折れない。11月の日本選手権直前の大阪ガスとのオープン戦では2本塁打。長谷川監督も「春先もケガがあったが、きっちり本番に照準を合わせてくる。さすがに体のキレはなくなってきたが、カバーするだけの配球の読み、そして経験値がある。もちろん、戦力の一人として考えていました」と、ここ一番での一振りに期待していた。西濃運輸との2回戦は代打で左飛。今大会は1打席のみで、これが現役最終打席。「戦力外」を伝える役回りとなった長谷川監督は、苦しい胸の内を明かす。

「つらかったですよ……。西郷にはいつまでもプレーしてほしかった。実績、実力は誰もが認めるところですが、それ以外の部分での影響力もあった。キャッチボール1球、ダッシュ1本に練習から真摯に向き合っている。執念。気持ちの強さはマネできない。かつて所属した長野(久義、現巨人)が慕っていたように、同僚も見習っていましたし、ホンダにとっても大きかった。ただ、いろいろな事情があり、若い選手もおり、どこかでこのタイミングが来る」

 西郷ほどの功労者であるならば、選択権は本人にあるかと想像できたが、世代交代の現実は厳しかった。

生死に関わる大ケガが転機


2012年、TDKとの都市対抗1回戦では、個人最多タイ記録[新日鐵名古屋・杉山孝一]となる14本塁打を放った。その内訳は金属バットで5本、木製バット(2002年以降)で9本だ



 波瀾万丈の野球人生だった・・・

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