再建に向けて動く竜投に
若松駿太あり。
中日伝統の球速ではなくキレで勝負するタイプだ。2月28日生まれ。2度目のキャンプが終わる日までまだ18歳のホープ右腕は、入団時にこんな言葉をつぶやいている。
「名古屋は都会ですよね。だって駅前のホテルに泊まったんですけど、歩いて3、4分のはずなのに道に迷っちゃって……。40分も歩き続けていました。僕の実家は田んぼに囲まれているので。一番近いコンビニは2キロ。何を買うのも2キロ走っているんです」
福岡県久留米市の出身。祐誠高では土木科で学び、3トン以下の小型重機を操る免許を取得している。3年夏も県大会2回戦で散った無名の投手に、調査票を依頼したのは中日だけだったという。しかし、7位で指名した若松への評価の正しさは、2013年シーズンの二軍で証明されつつある。
20試合に登板し、3勝2敗、防御率は3.98。43イニングで被安打47、奪三振19、与四球11と力でねじ伏せるタイプではないが、打者がとらえたと思った球を飛球に仕留める球威がある。それに目を付けたのが、ほかならぬ谷繁新監督だ。秋季練習のブルペンで「あいつは面白いね」とポツリ。直後の紅白戦で好投した若松に、迷うことなく第1号の「監督賞」として金一封を手渡した。
「(監督賞は)驚きましたが、励みになりました。監督に見ていただけることなんて、二軍にいたらなかなかないですから」
翌日には風邪をひき、練習を欠席。予定されていた契約交渉も延期になるという「オチ」はついたが、指揮官の頭に若松の名はインプットできた。14年中の一軍デビューもありそうだ。