シ烈を極める広島の先発ローテ争いにおいて、4年目の戸田隆矢は注目の存在と言える。昨季は30試合に登板して4勝2敗、防御率3.32。細身ながら150キロに迫る直球を投げ込む左腕だ。先発、中継ぎを両方こなせるが「投げられればどこでもいいですが、先発をやりたい気持ちはあります」と戸田。畝投手コーチも「左は欲しいところ」と話すなど、首脳陣も大きな期待を寄せている。

　広島の先発事情は昨年末に急展開を迎えた。8年ぶりに黒田が復帰することが決まった。畝コーチが「ただの補強じゃない」と話すように、存在感も信頼もケタ違いだ。これにより前田、黒田、大瀬良の三本柱に加え、新外国人左腕ジョンソン、野村、福井、九里らも控える分厚い構成となった。戸田はここに殴り込みをかけることになる。最大の武器は勢いのある直球。「真っすぐでしっかり押せるようになりたい。球質も上げて、スピードも上げたい」と意気込む。

　さらなるレベルアップにも余念がない。年明けは4日から始動。その後はチームメートの久本、菊池らと静岡で合同自主トレを行った。久本のアドバイスも受けながらみっちり汗を流した。さらに下半身強化と同時にオフの間には1日4、5食をノルマとして体重増量にも成功。「食べることとトレーニングを並行してやっています」と明かした。3、4キロ増えた体重で、球速150キロを目指していく。

　先発5、6番手争いは激しさを増していく。生きのいい戸田がローテに加われば、広島の勢いは増していく。中継ぎに回ったとしても、快速左腕はチームにとっては大きな武器となる。「1年間戦えるようにしたい」。戸田の勝負はもう始まっている。