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柳田悠岐外野手・世界のホームラン王の助言に得た手応え

 



 風は逆だった。2月12日に行われた紅白戦の3回無死、1ボールから大場の投じた2球目、132キロ直球を柳田悠岐は完璧にとらえた。右中間芝生席最上部に刺さる推定飛距離130メートルの工藤ホークス1号。本塁後方で出迎えた工藤監督は、まるで公式戦のように両手を差し出して出迎えた。「完璧です。いい感じで飛んだ。教えてもらったことをティー打撃から意識し、やってきたことが出たかなと思います」

 悩みを抱えたままキャンプインしたが、2日目に視界が開けた。昨季は打率.317、15本塁打、33盗塁。目標のトリプルスリー達成のためには、サク越えが不足。球界屈指のパワーを誇るものの、強烈な打球にはラインドライブのクセがあった。今季から侍ジャパン・小久保監督の背負った「9」を継承した大砲に声を掛けたのは王貞治会長だった。「バットの軌道とかじゃなくて、ボール(打球)の回転を練習中から意識することだ。打撃が変わってくる」。ボールの中心からわずかに下をたたくことで、ボールにスピンを掛ける新打法の手応えは上々だ。

 このキャンプの話題を独り占めした松坂が「この風で?」と目を見開いたほどの強烈な一撃にチーム内も騒然となった。昨季終盤は一番に座り、侍ジャパンのユニフォームを身にまとった日米野球でも核弾頭としてMVPに輝いた。ただ、本来、期待されるのは中軸だ。藤井打撃コーチは「四番だったり、五番は考えにはある」と李大浩、内川らと並ぶ候補に挙げる。

 宮崎の球春。つかんだ手応えは誰にも負けない。史上9人目のトリプルスリーが見えてきた柳田は、キャンプだけでなく、今季MVPさえ予感させる。
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