わずか2年で燕のエースに上り詰めた男が、もがき苦しんでいる。
小川泰弘は前半戦を終えた段階で4勝6敗、防御率3.53。すでに昨季の敗戦数に並んでしまった。「勝ち星は伸びていないし、勝てる試合も落としてしまった。後半戦は1試合でも多くチームの勝利に貢献したい」と巻き返しを誓っている。
課題はハッキリしている。左足を高く上げるライアン投法から投げ込む力強い直球が売りだが、走者が出たときはそのフォームで投げられないため、クイック投球に問題を抱えてきた。昨年まで「足を上げないと球が弱くなるイメージがあった」と平均1.3〜4秒かかっており、盗塁される機会が増えていた。そこで今季はキャンプから足を上げず、前に真っすぐ足を出すフォームに変更し、タイム短縮に成功したはずだった。
開幕から3連勝と進化したように見えたが、疲れがたまりだした5月に入ると、下半身が粘れなくなり、球の威力がガクンと落ちた。5月1日の
広島戦(神宮)から6月23日の
中日戦(岐阜)まで1カ月半以上もの間、白星から見放された。「クイックとバッターに対する集中力のバランス、そこをうまくやらないといけない」。クイックに意識がいき過ぎてしまうあまり、最大の武器である力強い直球が鳴りを潜めてしまっていた。
真中監督は「先発陣はみんな試合を作るところまではできている。でも軸がいない。特に小川あたりに出てきてもらわないと」と後半戦のキーマンに指名した。その期待に応えるように、後半戦初登板となった7月21日の
DeNA戦(横浜)で5勝目をマーク。01年以来のリーグVはこの男の腕にかかっている。