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内川聖一外野手・重責の中で真価を問われる四番

 



 奇しくも開幕からちょうど100試合目のことだった。8月13日、本拠地でのオリックス戦。工藤新監督の下、四番として打線の軸を務めてきた内川聖一が、今季初めて欠場した。試合前練習もキャンセルした理由は、左ワキ腹の張り。工藤監督は「大事を取った。長引いて悪くなれば、肉離れにもつながりかねない」と説明した。ただ

「乗り越えてほしい」と不振脱出を願うコメントを発した翌日のことだ。前週には「キャプテンだし、中心バッター。外すことはない」と強調してもいた。いわば前言撤回の欠場劇が、複数の思惑が絡み合っての判断をうかがわせた。

 横浜で2008年、ソフトバンクで11年と、両リーグで首位打者のタイトルを獲得。昨季まで7年連続で打率3割をマークした。今季は落合博満を超える、右打者史上初の8年連続打率3割達成が懸かっている。ところが、さかのぼれば春季キャンプから、繊細な打撃の感覚に「しっくりこない」ものを抱え続けた。主将として有り余る責任感からか、四番の打撃を熟考するあまりか。模索するうちに、夏前には痛めた左手首のケアが欠かせなくなった。欠場時点で打率は.286。欠場2日前も体調不良で試合前に点滴を打ってフル出場したほどだったが、「不動の四番」としての積み重ねは99試合で一度、区切りを迎えた。

 欠場した試合で、皮肉にもチームは12得点の大勝。「今日の試合で今までどれだけ自分が得点のジャマをしていたのかが分かった」と漏らした。静かで、悲痛な叫びだった。かつてない難局にある百戦錬磨の業師。このまま終わるはずがない。誰もがそう信じる。首位独走で優勝秒読みのチーム事情の陰で、内川が自らの真価を問う。
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