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高橋尚成投手・野球人生を懸けた3イニング

 



 入魂の41球だった。特別な感情はない。仕事を終え高橋尚成は、言葉にグッと力を入れた。

「これでホッとしているようではいけない。まだまだできる気持ちはある」。巨人時代の2007年に最優秀防御率のタイトルを獲得。メジャー・リーグにも渡った。5年ぶりに日本球界へ戻り、新天地に選んだDeNA。昨季は10度の先発機会を生かせず、まさかの0勝だった。移籍2年目も4月29日の広島戦(マツダ広島)で2回6失点KO。長い二軍生活を経て、8月8日の阪神戦(横浜)で帰ってきた。

 先発の高崎健太郎が2回5失点で降板し、今までのような出番ではなかった。与えられた役割は負け試合のロングリリーフ。それでも

「先発もリリーフもやれる強みがあると思っている。チームのためになることが一番。どんな状況でも、使ってくれる監督に感謝しなきゃいけない」と言い、一人ひとりを抑えることに集中した。

 2番手として3回からの3イニングを無失点。明らかに球のキレは増し、最速は143キロを計測した。「集大成の気持ち。本当にダメだったらユニフォームを脱ぐ覚悟」と強い決意で臨んだ15年。駒大の先輩にあたる中畑監督も「日本に帰ってきて一番(内容が)良かった。彼の野球人生を懸けた3イニング。素晴らしかった」と意地を感じ取った。

 かつて巨人のエースとして活躍した左腕も、今年4月で40歳になった。日米通算93勝。1球1球に懸ける思いは並大抵ではなく「先発にこだわりはない。一軍の戦力として、どういう形でも力になりたい」と覚悟を決めている。シーズン終盤で再浮上のきっかけをつかんだベテラン。輝ける場所は、まだまだある。
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