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矢野謙次外野手・奇跡的な一打で新天地に適応

 



 新たな戦力がチームに明るい光を灯した試合が6月14日のDeNA戦(札幌ドーム)。1点を追う6回一死一、二塁。新加入の矢野が初球をジャストミートし、打球は左翼席へ一直線。2年ぶりの一発は決勝逆転3ランとなった。3日前の同11日に巨人から交換トレードで加入したばかりの男が「ヨッシャー!」と叫びながら、熱さ全開でダイヤモンドを一周した。

 新天地の本拠地で鮮烈なイメージを残した。移籍後のデビュー戦となった12日の同カードでは3二塁打を放って勝利に貢献。お立ち台では「ファイターズ、サイコー!」と絶叫。北海道のファンの心をつかみ、3戦連続スタメンとなった14日は勝負強さを発揮。栗山監督も「一発で北海道のファンを、わしづかみにしたのだからすごい。ケンジ、良かったなぁと思った」と、舌を巻いた。

 決勝弾の場面を振り返ると、熱いものが込み上げてきて、感極まった。「今まで(巨人時代)だったら、あそこの打席に立っていなかったと思うんですよね……。絶対に代打を出されて代えられていた。あそこで(打席に)行かせてもらえて、絶対に打ってやろうと。マジ気合入りました」。涙をグッとこらえて話す姿に、ファンのボルテージも最高潮となった。

 矢野には巨大戦力の中でもがき、度重なるケガにも泣いた過去がある。北の大地で再起をかける必死な姿は、多くの人に訴えかけるものがあった。闘志を前面に出すプレースタイルや試合前の入念な準備など、若いチームに新たな息吹を吹き込んだ。移籍後間もなく輝いたベテランの一振りで決めた試合は、プロ野球選手の原点である野球への一途な情熱を再確認させてくれる試合だった。
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