週刊ベースボールONLINE


野球好きの作家の中でも有馬頼義は別格で父がプロ野球オーナー、本人も成蹊大監督。そして『四万人の目撃者』で探偵作家クラブ賞

 


 先週号では、野球好きで、野球小説も数多く書いた五味康祐さんが登場したが、昔から野球大好きの作家は多かった。思いつくままにその名を挙げてみるといる、いる!

 有馬頼義、寺内大吉、井上ひさし、山口洋子、常盤新平、阿部牧郎、伊集院静、海老澤泰久、赤瀬川隼、重松清……。この人たちに共通なのは、すべて直木賞受賞者であることだ。有馬は旧制成蹊高校(現成蹊大)でプレー、戦後は監督も務めている。伊集院はレッキとした立大野球部員(途中退部)。

 芥川賞作家にも野球ファンは多い。先週の五味を筆頭に、丸谷才一、清岡卓行、高橋三千綱、吉目木晴彦……。清岡はセ・リーグの事務局員だったし、高橋は東京スポーツ紙に勤めていたこともある。

 もちろん両賞に関係のない野球ファンの作家も多い。大岡昇平、井上友一郎、山口瞳、後藤明生……。なぜ、こんなに野球は、文字を連ねるのが仕事の人たちを引きつけるのか。この中には大岡、丸谷、井上といった日本を代表する知性がいるのだから、野球は奥が深いということか。

 野球との本当の縁の深さで言えば、やはり、有馬ということになるだろう。父・頼寧は、旧久留米藩、有馬家の当主にして貴族院議員。1936年、東京セネタースを創立してオーナーに(ちなみにセネタースの名は有馬が貴族院=上院議員だったことからつけられた)。頼寧は、競馬の有馬記念にその名を残す。頼義が学習院初等科→成蹊高中退→早大第一高等学院中退と落ち着かない学校生活を送ったのは“殿様”への三男坊の反抗だったと言われている。

 プロ野球を題材にした58年発表の『四万人の目撃者』で探偵作家クラブ賞。と書いてきて資料室をのぞいてみたらすごい写真が出てきた。昭和30年代半ばの推理小説界の重鎮たちだ。左から江戸川乱歩、有馬、木々高太郎(林髞)。有馬の受賞風景らしいのだが、確定できないのが残念!!
おんりい・いえすたでい

おんりい・いえすたでい

過去の写真から野球の歴史を振り返る読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング