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とうとう神宮球場が消える日が来た
半世紀近い神宮通いの一番の思い出が「三色おにぎり弁当」、次がミスターの2000安打

 



 神宮球場が、とうとう取り壊されることになった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの“命”となってしまった。1926年(大正15年)の完成だから、100年の寿命を保てなかったことになる。

 まあしかし、半世紀近くこの球場に通っている身には、球場の老朽化がイヤでも目についてしまうのは是非もない。いずれは、消える運命と近年はずっと、自分に言い聞かせてきた。ほかのどの球場にもこれほどひどいものはない、あの固くて小さなイスも、どうせもう少しなのだからと我慢してきた。

 この半世紀、私事も含めてこの球場ではいろいろあったが、自分の一番の思い出は? となったら、意外なことに(意外過ぎる!)、「三色おにぎり弁当が、懐かしいなあ」だった。現在は売られていないが、学生時代はいつもこれを食べていた。おかかと、ノリと、赤飯の3種類のおにぎりに、たしか、タクアン(だったと思う)が2切れついて150円(100円の時代もあったかな?)。これを頬張りながらスコアをつける。「小坂また四球かよ。チェッ、荒川またエラーだ」と文句もつける。早大の小坂敏彦投手と荒川堯遊撃手のことだが、なぜか、完投勝利やホームランではなく、こちらの方が記憶に残っているのだから、お2人には気の毒なことである。まあ、野球の記憶とはそんなものだろう。

 巨人長嶋茂雄三塁手の2000安打もここで見ている。当日ブラリとやってきても、三塁側の内野のかなりいい席が買えた。ということは、満員どころか、空席がかなりあったのだ。ヤクルト浅野啓司投手から打ったライナーのきれいな打球が、筆者の目の前を左前に飛んでいった。71年5月25日のこと。今週はミスターの2000安打達成の写真をご覧いただこう。そう、あのころの神宮の照明はたしかに暗かった。
文=大内隆雄
おんりい・いえすたでい

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過去の写真から野球の歴史を振り返る読み物。

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