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巨人は今年の納会を中止したが、昔の納会はなかなか面白かった。長嶋新監督が「助けてください」と言ったり、トレード通告選手が荒れたり…。

 

文=大内隆雄



 巨人は、3人の野球賭ばくに関わった選手が出たことで、襟を正す意味で、恒例の納会と納会ゴルフを中止にした。まあ、現代のプレーヤーは、納会と納会ゴルフをそれほど楽しみに待つということはないだろうが、昔の選手は、「さあ、納会だ、ゴルフだ!」と結構気合が入った(?)ものである。いまほど、多種多様な楽しみがない時代。納会は、球団にとっても、選手にとっても、さらに担当記者にとっても、1年を締めくくる一大イベントだったのである。

 この写真も納会での1枚。左から2人目が王貞治とすぐ分かるから、巨人の納会である。これは1974年11月29日、熱海後楽園ホテルで行われた“歴史的納会”なのだ。川上哲治監督が退任、長嶋茂雄新監督が就任した年の納会なのだから。お2人のツーショットでもよかったのだが、いまの読者に、40年以上前の納会が、どんなものだったかを理解してもらえる1枚を選んだ。

 巨人は同ホテルでの納会が恒例となっており、このようにきれい所がはべり、お酌してくれる。岩下志麻にちょっと似た美女を前に、王サンもマンザラではない表情。左から須藤豊、王、柴田勲槌田誠倉田誠末次利光吉田孝上田武司。V9の主役、ワキ役たちである。

 筆者は、実は、新米巨人担当として、この納会を取材していた。長嶋監督は、あいさつの中で「僕をこれから助けてください」という表現を使った。筆者は「へ〜え、ミスターがそんなことを言うんだ」とちょっと驚いたものだった。しかし、これは長嶋新監督の“切実な叫び”だったのだ。長嶋を欠く巨人は、翌75年、球団史上初の最下位に沈んだ。長嶋新監督は、翌年の大嵐を予感していたのだろうか。

 その75年の納会にも顔を出したが、納会は修羅場に変じることもある。トレードを告げられたばかりの選手が荒れたのである。記者たちを空き部屋に連れ込んで、75年の長嶋巨人をメッタ斬りしてみせたのだ。だから、納会からは目を離せないのだ。
おんりい・いえすたでい

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過去の写真から野球の歴史を振り返る読み物。

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