週刊ベースボールONLINE


第97回全国高校野球選手権大会 埼玉大会

 

「熱中症予防」で導入した3イニング毎のグラウンド整備


 特別な夏だからこそ、完全燃焼できるように――。7月10日に開幕した、全国高校野球選手権大会埼玉大会では、熱中症予防として3イニングごとにグラウンド整備を行っている。

 通常は5回終了時の1度のみだが、今夏から3回、6回終了時の2度に変更。延長戦突入時には、9回、12回終了時にも整備を行う。目的は選手、応援団、観客らの熱中症予防で、細目に水分補給の時間を設けるねらいがある。埼玉県高等学校野球連盟の高間薫専務理事は、全国初となる導入の経緯を次のように説明する。

「過去に4回、熱中症で選手が倒れたことがあって、その選手は途中交代。夏のために練習を積んできたのに力を出し切れないのは無念だったはず。選手をサポートするのが私たちの仕事ですから、そういうことをなくしてあげたいと思いました」

今夏の埼玉大会開幕戦。3回終了時にグラウンド整備を行う開智と新座総合の選手たち[写真=桜井ひとし]



 原則的に20人のメンバーから漏れた選手が整備を行うが、部員が20人に満たないチームはベンチ入りの選手が行う。だが、整備よりもまず、休憩を優先。整備中は、当然、ゲームは中断され“間”が生まれ、投手のリズムや攻撃の流れなど、ゲーム展開にも多少の影響を及ぼす。これまでの6回から、4、7回に試合が動くか注目された。その新ルール。開会式直後に行われた開智と新座総合の開幕戦では、この“間”をうまく使い、開智が勝利を収めた。

 開智は部員16人のうち10人が1年生と若いチーム。先発も1年生の福島一棋だった。「初めての夏に加えて注目される開幕戦。見て分かるほどガチガチでした」と、篠崎優監督が語るほどエースは緊張していた。開智は初回に1点を先制するも、その裏に投ゴロを一塁悪送球で同点とされる。3回には2点を勝ち越すが、裏の守りで3本の長短打にボークと暴投が絡んで、3点を奪われ逆転を許した。どこか地に足がつかないまま3回が終了し、グラウンド整備へ。

「全員を呼んで、とにかく落ち着かせました」(篠崎監督)

 すると4回は両軍ともに3人で攻撃を終え、ゲームが一旦落ちつくと、5回に開智が4点を挙げて再びリード。その後、反撃を許しながらも8対7で開智が開幕戦勝利を飾った。

「早いタイミングで長いミーティングを取れたのは大きかった」と篠崎監督が言えば、「整備中に監督さんから『落ち着け』『緩急を使え』とアドバイスをもらえて、1回、頭を整理することができました」と先発の福島。新ルールが功を奏し、平常心を取り戻して勝利を呼び込んだ。

 この新ルール。夏の大会のみの実施で、秋と春は5回終了後の1回に戻る。来夏も予定だが、参加校の監督、部長にアンケートを配布し、しっかりと意見も聞き入れている。

参加校の監督、部長先生に『新ルール』に関するアンケートを配布し、大会中に回収。現場の声を聞き入れ、より良い大会運営を目指している



「今年、高校野球100年の節目を迎えました。そして150年、200年と続けていくために、私たちは選手たちのサポートを続けていくだけです」と高間専務理事。“悔いのない夏”の手助けを。新ルールが、選手たちの“完全燃焼”に一役買う。(取材・文=鶴田成秀)
アマチュア野球情報最前線

アマチュア野球情報最前線

アマチュア野球取材班、ベースボールライターによる、高校・大学・社会人野球の読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング