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Professional Report 2013〜元巨人チーフスカウト発[中村和久]〜

白村明弘[慶大]

 

ブランクを経て表舞台へ戻ってきた
ドラフト超目玉右腕

前回登場した大瀬良大地(九州共立大)とともに、大学生右腕2トップを形成するのが白村明弘(慶大)だ。慶応義塾高時代からドラフト上位指名候補として脚光を浴びていた。大学入学後は登板機会に恵まれなかったものの、3年秋に4勝を挙げてようやく表舞台へ。このドライチ候補の可能性を探ってみたい。

【投球フォーム=8.5点】
 現段階でそのフォームは定まっておらず、だからこそ大きな将来性を感じさせる投手だ。一般的に投球というものは軸足にタメを作って投げるものだが、現在の白村はその部分が乏しい。投球フォームにテンポ、リズムが足りず、メリハリが利かないのだ。また、前足の歩幅が安定しないことも球質、制球の悪化につながっている。下半身主導を強く意識してカベを作り、前足(左足)が着地してから腕を振ることを心がけたい。もともと腕の振り自体はしなやかで、そのため上体の力だけでも150キロを超す速球を投げることができるのだ。修正すれば、さらに良くなるはずである。

【ストレート=9.0点】
 球速は出るが、今後は球の伸び、キレを追求したい。フォームでも述べたが、しっかりと下半身を使い、質の良いストレートが安定して投げられるようになること。各球団のスカウトが評価しているのは球のキレ、そして長身から投げ下ろす球の角度。さらにその精度を高めていきたい。


【変化球=9.0点】
 持ち球はカーブ、スライダー、ツーシームがメーンとなる。特に緩いカーブは落差があり、この球種を効果的に使えるようになった。ここからもう一歩進み、コースに投げ分ける能力を磨いてもらいたいところだ。具体的にはストライクを取るカーブ、そしてストライクからボールになるカーブだ。これを身につければさらに投球が楽になるだろう。

【投球術=9.0点】
 高校時代には甲子園、大学では神宮大会と全国の大舞台を経験しており、マウンド経験が豊富な投手と言える。ただ、大学では2年秋から1年近く実戦マウンドから遠ざかってしまった。「遅れを取り戻さなければいけない」という焦りがあるのかもしれない。そのためフォームの乱れが散見され、安定感も十分とは言えない。だが、そこさえクリアすれば、実力的には間違いなくドラフト1位候補である。復活を果たした次のシーズン、春の投球内容に注目したい。

【制球力=8.5点】
 現状ではややアバウトと言わざるを得ない。ただしフォームの安定により、すべては良い方向へと向かうはず。まずは右打者へのアウトローにしっかりコントロールできる精度を高めていきたい。制球が安定してくれば秋同様、春季リーグでも4勝は固いところ。5勝するとなれば、慶大が優勝戦線へ絡んできそうだ。そのカギはこのエースが握っているといっていい。

【守備力=8.5点】
 さまざまな経験があることから、有走者時にも落ち着いた対応ができている。ただ、バント処理時における捕球から送球へ移る動作はやや雑な印象がある。正確なスローイングを心がけたい。それでも、フィールディングに対する意識の高さは感じられる。これから高いレベルでさらに場数を踏んでいけば、解消される課題と言えそうだ。

【メンタル=9.0点】
 ブランクが長かった分、「野球がやりたい」という渇望感が高まっている印象がある。これまでは体作りが伴わずひ弱な印象もあったが、休んでいた間に徹底したウエート・トレーニングに取り組んだのだろう。たくましくなった体とともに、マウンド上では強いメンタルも感じさせる。だが、それを必要以上に出し過ぎると焦りにつながる。内に秘めながら投球すれば、リーグ戦8週間という長丁場も十分に乗り切れるだろう。

【体力=9.0点】
 恵まれた体格を十分に生かしており、持久力がある。ただ、上体が強いフォームであることから、5〜6回と中盤以降に相手打線に捕まるケースも見られた。まだまだ発展途上で、体力強化を優先させなければいけない。高い目的意識を持ってトレーニングに臨んでもらいたい。

【将来性=9.5点】
 これまでの課題が解消されれば、はっきりと「先発タイプ」と言うことができる。プロ入りした後もまずは中継ぎで経験を積んだ後、本格的に先発を任されるのではないだろうか。とにかく右腕をしなやかに振れることが最大の魅力。この特徴を生かせば、今以上に変化球を使いこなせるようになる。2013年にはドラフト1位で藤浪、大谷、菅野、東浜ら好右腕がプロの世界に飛び込むが、素材的にはその彼らをしのぐものを持っているかもしれない。

【総合力=9.0点】
 高校時代に神宮大会で優勝し、さらに甲子園出場経験もある。華々しい活躍を見せてきただけに、高いプライドを持っているはずだ。だからこそ、現状にはジレンマを感じているかもしれない。ただ、そこで焦ることなく、マウンド上では常に気持ちを鎮めて投げたいところ。レベルの高い六大学リーグ戦を乗り切り、結果もついてくれば大きな成長につながるはずだ。スカウト目線で語れば、一度評価を落とすと取り返すのは厳しいもの。しかし、予想に反して一気に戻ってきたのがこの白村だった。ひと冬越えてさらに1ランク上の自分を作れているか。プロの手前まで来ている選手。その成長度合いに注目したい。

白村明弘の三大長所
ストレート - 球速アップの余地あり
腕の振り - 天性のしなやかさ
メンタル - ブランクを経て成長

PROFILE
はくむら・あきひろ●1991年12月11日生まれ。岐阜県出身。187cm、84kg。右投左打。大和小3年から山手テリヤーズで野球を始める。美濃加茂東中では岐阜ビクトリーズに在籍。3年時から投手専任となる。中日本選抜で中国遠征に参加。慶應義塾高では2年春から3季連続甲子園出場。2年秋からエースとなり、県大会と関東大会、そして神宮大会を制した。翌春のセンバツは初戦敗退。同夏の県大会は3回戦敗退。慶大では1年秋にリーグ戦デビュー、3年秋に初めて規定投球回数に到達。ストレートの最速は153キロ。変化球はカーブ、スライダー、ツーシーム。

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