打者が放った右翼線の大飛球を追った右翼手は、スタンド内に手を差し伸ばし、捕球するかと思われました。しかし、その瞬間、スタンドのファンがこのボールを横取りしてしまいました。ファンが捕らなければ完全に捕球できた打球を観衆に横取りされたのです。この場合、打者アウトは成立しますか。 フィールド外にいる観衆に横取りされたのは右翼手にとって気の毒でしたが、この場合はファウルとなります。
規則3.16には、
「打球または送球に対して観衆の妨害があったときは、妨害と同時にボールデッドとなり、審判員は、もし妨害がなかったら競技はどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとる」 とありますが、続く[原注]の中段にこうあります。
「野手がフェンス、手すり、ロープから乗り出したり、スタンドの中へ手を差し伸べて捕球するのを妨げられても妨害とは認められない。野手は危険を承知でプレイしている」 つまりスタンド内では観衆に優先権があり、いかに野手が確実に捕球できた打球だとしても、観衆に横取りされるとファウルとなり、文句は言えないということです。
ただし、同[原注]の続きにこうあります。
「しかし、観衆が競技場に入ったり、身体を競技場の方へ乗り出して野手の捕球を明らかに妨害した場合は、打者は観衆の妨害によってアウトが宣告される」 スタンド内は観衆に権利があっても、フィールド内は野手に権利があるというのです。
14年9月4日の
ソフトバンク-
オリックス戦(ヤフオクドーム)、3回裏の攻撃で、先頭の
松田宣浩が
西勇輝から右翼へ大飛球を打ちました。
糸井嘉男がこれをファウルグラウンドまで追い、ジャンプしながらスタンド内にグラブを差し入れ、つかんだかに見えましたが、スタンドのお客さんがこれをつかんだので、ファウルとなりました。
そして、16年6月14日の
巨人-
楽天戦(東京ドーム)、7回表の攻撃で、
オコエ瑠偉が
戸根千明から右翼ファウルゾーンへ飛球を打ちました。
長野久義がファウルグラウンドまで追い、落下点付近で捕球体勢に入ったところ、一塁から右翼ファウルゾーンに設けられたエキサイトシートから身を乗り出したお客さんがこれをつかんだので、アウトになりました。