今年のドラフト直前、大きな注目を集めていた
田中英祐(京大)を取材させてもらった。本人は自身最後のリーグ戦を前にしていたため、京大の寶馨監督、白陵高の高見繁統監督の両名に話を聞いたのだが、淡々とした印象を受ける田中本人の言葉よりも、よりその内面が見える機会になったのではないかと思う。
詳しい内容は10月15日発売の週刊ベースボール10月27日号をご覧いただきたいのだが、2人の恩師が共通して口にしたことが、「同じ環境下にある選手たちの希望となってほしい」ということだった。
京大、白陵高ともに一筋縄ではいかない難関入試校で、入学時だけではなく在学中も、勉学に力を入れることを余儀なくされる。設備も充実したものではなく、練習時間も限られている。しかし田中はそれを言い訳にすることなく、できる環境で創意工夫を凝らして成長し、ドラフト指名を勝ち取った。
白陵高の高見監督曰く、「初めはちょっと球が速いな、という程度」。京大の寶監督曰く、「入部するまでは存在を知らなかった」。こと野球に関してはエリートではない。野球有力校に所属しているわけでもないが、それでもプロへの扉は開かれている。
希有な例ではあるだろう。しかし田中は実際に
ロッテに2位指名され、プロの門をたたく権利を手にした。時間はかかるかもしれない。だが、もしこの先にプロの世界で結果を残せたとすれば、それは多くのアマチュア選手の励みとなるはずだ。(吉見)