ズラリと並べられた6台のテレビ画面。そこに映されているのは、すべてプロ野球の試合だ。レコーダーも稼働しており、6試合を逐一記録に収めている。刻一刻と変わる試合状況。気になる選手が登場すると、大きな眼はその一点に集中する。
ソフトバンクを指揮官に就任した
工藤公康監督を評論家時代に取材する前、仕事部屋に入って見た光景だ。評論家として、いつ、どの試合の解説を求められても対処できるようにしているのだろう。その姿勢に頭が下がる思いだった。
取材で話を聞いても、サービス精神旺盛に、どんな質問に対しても立て板に水を流すように答えてくれる。「なぜ、29年間、現役でプレーできたのか?」という問いに「正直、分からない。目の前のやらなければいけないことをやってきただけ」と答えが帰ってきたのも印象深い。先を見過ぎるのではなく、一瞬にすべてを懸ける。その積み重ねが長くユニフォームを着た礎となったのかもしれない。
11月13日、秋季キャンプが行われている宮崎の地を訪ね、初めて練習を視察した工藤監督。「連覇ができるようなチームをつくっていきたい」と強い決意をにじませた。同時に日本一のチームを率いるプレッシャーはあるのは間違いない。しかし、きっと工藤監督は地道に分析を重ね、亀の歩みのごとく、着実に一歩一歩進んでいくのだろう。(編集長・小林)