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本誌編集長コラム

変化球がなくても

 

 過日、7月2日発売予定の『阪神80年史PART. 3』に掲載する田淵幸一辻恭彦の対談取材を行った。両者とも猛虎の歴史を支えた捕手だったが、語り合う中で田淵が自らボールを受けた投手で最強の投手として名前を挙げたのが江夏豊だった。

 稀代の左腕の球種はストレートと曲がらないカーブのみ。精密なコントロールと天性の勝負勘を兼ね備えていたため、それだけでシーズン最多の401三振を奪い、ノーヒットノーランを達成した。

「オールスターの9連続三振だって、真っすぐしかなかったんだから」と田淵は教えてくれたが、奇跡に近いパフォーマンスを発揮できたのも、ピッチングに対する飽くなき探求心が礎になったのだろう。

 キャンプのブルペンでも自らが納得するまで、2時間でも、3時間でも投げ続けたという。だからこそ、至高の境地に達することができたのだと思う。

 先週号に続いて、今週号でも変化球を特集したが、現役投手にも自らの持ち球を磨きに磨いてもらいたい。唯一無二の球種、魔球へと昇華させてもらえば、よりゲームが面白くなることは間違いないだろう。
野球の風

野球の風

週刊ベースボール編集長の編集後記。球界の動きや選手に対して編集長が思いをつづる。

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