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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「春季キャンプ」

 

監督の思想、哲学を選手に伝えておくことが肝要


 春季キャンプの1カ月間をどう切り抜けるかは、監督にとって大きな課題である。私は24年間プロ野球の監督をしてきたが、満足にキャンプを終えたことは一度もなかった。

 キャンプが終わると、必ず思うのだ。何かやり残しているような気がする、と。

 キャンプの1カ月は、選手たちの頭も真っ白だ。つまり、一番物事を吸収しやすい状態でやってくるわけで、私はそこが選手たちとの闘いにおける勝負どころ、と考えている。

▲春季キャンプの過ごし方がチームの命運を左右する[左は角コーチ]


 そこでミーティングを開き、私独自の野球学を展開していく。野球とは、試合とは、勝負とは、ピッチャーとは、キャッチャーとは……。選手に何か教えるというよりは、監督と選手の間の“確認作業”といった方が良いだろう。監督の考え──オーバーに言えば思想、哲学を選手に伝えておかなければ、選手は動きづらい。もっと分かりやすく言うなら、「監督が好むプレー」「監督が嫌うプレー」を知っておいた方が、選手は動きやすい。こういうプレーを監督は非常に嫌っている、監督はこういうところを見ている。そういった目の付けどころみたいなものをあらかじめ教えておいてやるわけだ。『野球は頭のスポーツである』

 以前このページでも書いた、この話を具体的にしていく。1球投げて休憩、1球投げて休憩……。こんな休憩の多いスポーツがほかにあるのか。それは何を意味しているのか。次のボール、次のプレーに対して考えなさい、備えなさい。そのための時間を野球は与えてくれている。そういった1球1球の積み重ねが野球である。

 選手たちに説いた『とは』教育の内容を、以下に少し記しておこう。

『勝負』とは──彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず。

 孫子の兵法だ。まず自分を知り、次に相手を知る。そこから自分なりの戦術を考えていく。

『ピッチャー』とは──

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野村克也の本格野球論

野村克也の本格野球論

勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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