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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「プロ1年目」

 

ブルペンで球を受けただけでクビを宣告された1年目のオフ


 私は一度、クビになりかけたことがある。南海ホークスにテスト入団し、1年目のシーズンを終えたときのことだ。

 二軍の試合に出ることもできず、ただひたすらブルペンで球を受けただけの1年だった。まあ、1年目はしょうがない。二軍とはいえ、最初から試合に出してもらおうなんて、ムシがよすぎるだろう。なんといってもキャッチャーのポジションは1つしかない。先輩キャッチャーも2、3人いた。そりゃあ、1年生はそう簡単に出してはもらえないはずだ。そう自分なりに納得していた。よ〜し、来年は頑張るぞ、と思った。

 契約更改の日。なぜか私が二軍の契約更改、トップバッターだった。なんだよ……とは思ったが、とりあえず更改が行われる大阪球場の一室に向かった。コンコン、とノックして入ると課長が一人、座っていた。

「まあ、座れ」

 私が腰を掛けると、課長は続けた。

「プロってどうや?」

「厳しいですね」

「まあ、それは覚悟してきたんだろう?」

「はい、覚悟はしていましたが、予想以上に厳しいです」

 すると、課長はこう言った。

「まあ、来年からはそういう心配もない。楽ができるから」

「なんでですか?」

「クビだよ」

「ええっ? 僕・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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