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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「捕手の仕事」

 

観察、洞察力のあるキャッチャーははたしているのか


 キャッチャーの仕事は第一にバッター分析、そして配球術である。

 バッター分析のポイントは、まず『変化球への対応』。バッターにとって、それはバッティングにおける最大のテーマである。そして、バッティングはタイミング。なぜ「球種を絞る」「コースを読む」かといえば、うまくタイミングを合わせるのに必要だからだ。

 これをキャッチャー側から見れば、変化球のサインを出すのは、バッターのタイミングを狂わせるため。ストレート1本なら、バッターは苦労せず1、2、3のタイミングで打てる。ところが何が来るか分からないから、タイミングが狂う。

 キャッチャーは打席におけるバッターの反応を観察、洞察してサインを出さなければならない。しかし今のプロ球界に、そこまで優れた観察、洞察力を持つキャッチャーは見当たらない。だから2球、3球同じ球が続くなど、配球にクセが出る。

 例えば前の打席、ストレートを投げてヒットを打たれたとする。すると、次の打席もまたストレートから入る。ストレートを打たれたから、次の打席では変化球から入るだろうと思わせて、まずストレート。「ええっ?」とバッターを驚かせようと思うのは、キャッチャーの本能だ。すぐ、裏をかきたがる。キャッチャーとはなんせ、“裏稼業”なのである。

 私がバッターを、

A型=常にストレートに合わせて変化球に対応する理想型

B型=外角か内角かコースに絞って打つ

C型=引っ張るか流すか打つ方向を決めて対応する

D型=球種を絞る不器用型=私のようなタイプ

 と4つに分けて分析していた話は、以前も書いた。相手バッターは本当のことを教えてくれないから、この分類のため、とにかく情報を集めた。ヒーローインタビューも、逃さず聞いた。あれはかなり参考になる。ヤマを張って打ったくせに、「うまく体が反応してくれました」など、やはり皆、自分に不利なことは隠してくる。もちろん、堂々と「狙っていました!」と言う選手もたまにはいたが。とにかく見る、読む、聞くはキャッチャーにとって欠かせない仕事だった。

バッターの分析が捕手にとっては重要。自身も現役時代、その部分に腐心した



 オフタイムも、相手バッターの情報収集に使った。夜、クラブなどに飲みに行くと、必ず・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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