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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「2016年監督事情」

 

なぜ一般社会でも「外野」と言うのか


 前号で、阪神金本知憲監督誕生の話題に少し触れた。ちょうど読者から“外野手出身監督”に関する質問が届いていたので、紹介しよう。

「野村さんは“外野手出身者は監督に向かない”というのが持論ですが、セ・リーグでは中日を除く5球団の監督が外野手出身になりました。この件について、いかがでしょうか。また、“外野手は遠くから見ていることが多いので、客観的に野球を見るという指揮官としては大切な資質が身に着く”と言っている野球評論家もいます。この考え方について、野村さんはどう思われますか?」(タカシさん、36歳)

 プロ野球80年の歴史があって、外野手出身の名監督はいない。三原脩水原茂鶴岡一人川上哲治といった日本プロ野球史上に名だたる大監督たちも、すべて内野手出身だ。私の持論は、つまり歴史が証明しているのである。

 われわれが監督に就いたとき、監督業のベースになるのは、選手時代の経験だ。外野手は個人差こそあれ、ほとんど頭を使わずに守れるポジションである。前を守るか、後ろを守るか、ほかの野手とどう連携を取るか。ほかの野手と比べれば、そこまで緻密に考える必要がない。おかしなところを守っていれば、必ずベンチから指示が出る。守りながら、イメージバッティングをしている選手さえいる。だから、一般用語でも部外者や仲間外れのことを、「外野」と俗語表現するのだ。

 その点、手前味噌だがキャッチャー出身者は、選手時代に監督以上の仕事をしてきている。1球1球、「直球来い」「変化球来い」とサインを出して、試合を作る。いわば、野球というドラマを作る演出家であり、脚本家。そう気が付いたとき、私は怖くなった。自信がなくなった。そこで鶴岡監督に相談し、1試合(正確に言うと5イニング)だけライトを守らせてもらった話は、以前ここにも書いたと思う。

 そのとき見た外野からの風景は、当然ながらキャッチャーとして見るものとは正反対。とにかく落ち着かなかったのを覚えている。確かにフィールドのすべては見渡せるが・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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