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毎日、毎日、バットを振り続けた成果が数字になって表れた。144試合にフル出場して積み上げた198本のヒットに、残した打率.341はともにキャリアハイ。2009年にも打率3割を残しているが、それとはまったく違う重みがある。鷹の打撃職人が語った至高のバッティング論。

取材・構成=菊池仁志 写真=高塩隆、中島奈津子、湯浅芳昭
※インタビューの最後に長谷川勇也選手の直筆サイン入り色紙(2名様)プレゼントについてお知らせがあります

タイミングの始まり

――打率.341で首位打者、198安打は最多安打で2冠を獲得しました。まずは打率の自己評価を聞かせてください。

長谷川 自分では、2009年の.312よりは打ちたいと思っていたので、その点は良かったです。

――猛打賞22試合、マルチ安打63試合は球団記録となりました。固め打ちが多かったのも今季の特徴です。

長谷川 今季はタイミングを意識してやってきました。ある程度、どんなピッチャーでも真っすぐのスピードさえ把握できていれば対応できました。何とかなるというか……そのあたりが固め打ちにつながっているのかもしれないです。

――ということは、打席では常にストレートのタイミングで待っている。

長谷川 そうですね。真っすぐと変化球とのスピード差があるタイプだったら、真っすぐを少し詰まらせるくらいで待ったりもしますが、基本はストレートのタイミングです。そこからの対応ですね。

――タイミングの取り方といえば、構えたとき、腕を使って間合いを取るしぐさが見られます。

長谷川 そこはタイミングもありますが、トップに入るまでの予備動作でもあります。トップに入るまでの動きについては、だいぶ試行錯誤しながらやってきました。その形はシーズン中もいろいろと変わったりしています。



――比べないと分かりづらい部分ですが、そこがうまくいった要因の一つですか。

長谷川 同じことをずっと続けていたら、感覚が鈍くなってくるんです。最初は良くても、ずっと続けていると良い形でできなくなってきます。そういったときに、違った方法を取り入れる。ゴールは一緒ですが、ルートが違うというイメージを作ってきました。

――ゴールとはトップのこと?

長谷川 そうです。自分が理想とするトップの形があって、そこに至るまでの道筋はコンディションを見極めながらベストな方法でたどり着けるように、と考えてきました。トップさえ決まれば、必然的に良いスイングに収まりますから。

――「感覚が鈍くなる」という言葉が興味深いです。

長谷川 そこは自分なりに感じてくるんですよね。納得がいかないスイングになっているとき、それはだいたい体の開きが早いときなんですけど、そのときはトップが決まっていない。トップが決まらないのは、その前の動作に問題がある。そうやって逆算していって、構えの部分で修正したりしてトップに良い形で入れるようにしています。



――そのためのタイミング重視。昨年までとは考え方が違うのでしょうか。

長谷川 昨年までは自分のスイングが良ければいいや、と。だからピッチャーが動き出してからタイミングを取り始めていたんです。今年は動き始める前からタイミングを始めている感覚です。

――自分の間合いで勝負するということ。

長谷川 「タイミングの始まり」をしっかり意識するんです。そこがあやふやになると、テークバックが良いところに入っていかず、トップも決まらない。タイミングの始まりがあると、動きにメリハリがつくのでトップに良い形で入ってきてくれますし、フォームにリズムも生まれます。だから変化球で抜かれてもなんとかできる形に持ってこられます。

――「タイミングの始まり」?

長谷川 分からないですよね(苦笑)。意識の問題なんですけど、僕の中では構えを作ったときにバットの先端から意識をピッチャーに向かって飛ばすんです。そこがタイミングの始まりで「1」。トップで「2」を決めて「3」でスイング。「1」があやふやだと「2」もうまく入らないし、そうなると「3」は抜かれたり泳がされたり、ボールに差しこまれたりしてしまいます…

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