週刊ベースボールONLINE

2015タイトルホルダーインタビュー
涌井秀章インタビュー「個人タイトルなんておまけ、優勝がしたい」

 

先発として限界説がささやかれることもあった。だが、エースのプライドで自らを鼓舞し、喧騒を沈黙させた。個人タイトルはあくまで通過点。来季こそ、チームを頂点に導いてみせる。
取材・文=吉見淳司、写真=阿部卓功、BBM

志願の最終登板で最多勝を獲得


西武からFA宣言し、ロッテに加入した1年目の昨季は8勝12敗。先発投手として1年間ローテーションを務めたが、期待どおりの成績を残すことはできなかった。しかし今季は5年ぶりに2ケタ勝利をクリアしただけでなく、個人タイトルを獲得、さらにはチームのCSファイナルステージ進出にも貢献した。



――最多勝とゴールデン・グラブ賞のW受賞おめでとうございます。涌井投手にとって最多勝は6年ぶりのタイトルとなります。

涌井 最後にタイトルを獲ってからこれだけ期間が空いて、その間にいろいろあったので。タイトルがどうこうというわけでなく、ちゃんとした成績を残したいという思いはありました。そのおまけで最多勝のタイトルを獲れたという感覚です。ゴールデン・グラブは……変な話ですが、当然だと思っているので(笑)。

――フィールディングは涌井投手の武器ですからね。それでは、涌井投手にとって最多勝が持つ意味は。

涌井 チームの柱、エースと呼ばれる人はチームに勝ちをもたらさないといけない。最も勝ったという証しなので、先発としてはすごく大事な賞だと思いますね。

――15勝目を挙げたのはシーズン最終戦(10月6日楽天戦、コボスタ宮城)。自ら志願して登板したということですが。

涌井 CSもあったのでいろいろ考えたのですが、伊東(勤)監督、落合(英二)コーチと話し合い、落合コーチから「タイトルは毎年、絶対に獲れるわけではない。1年間しっかりやってきたから、投手コーチとしてはお前に獲ってほしい」という言葉をいただいたので、素直に「分かりました。投げます」と言いました。

――登板するからには勝たないといけないというプレッシャーがあったのではないでしょうか。

涌井 投げるからには勝ちたかったですけど、CSへの調整登板という意味もありましたし、後半戦は調子が良かったので、特に気負いはありませんでした。

――しかし実際には3対3のまま延長戦へ突入。涌井投手は10回まで投げ、味方が11回に6点を勝ち越して勝利というタフな試合になりました。

涌井 先制点を奪われてしまい、6回に3点目を取られたときには正直、あきらめましたね(笑)。でも、試合中にも例えば円陣を組んだときに、(鈴木)大地が「ワクさんに勝たせよう」とずっと言ってくれていたので、切れかけた気持ちを奮い立たせてもらいました。

――後半戦は涌井投手が投げた試合で打線がしっかり点を取るなど、チームがかみ合っていました。

涌井 7月中盤から西武が13連敗し、その間にロッテが7連勝をしたことがありました。それまでは完全なる目標がなく、ただ4位だったので、上のチームを追いかけていこうという意識が漠然としていたような変な雰囲気でしたが、その連勝でゲーム差が縮まり、チームが「行けるぞ」という雰囲気になってきた。自分も明確な目標を持てたことで気持ちが乗ったのだと思います。味方が点を取ってくれるまでは何とか失点しないようにと意識したからこそかみ合ったんじゃないでしょうか。

後半戦は9勝2敗と好調を維持した。さらに期待される来季に向けて、確かな手応えを得ている



――今年はスライダーとカーブで打者を打ち取るシーンが多く、いろいろな球種で抑えられる涌井投手らしさが出ていたように思います。

涌井 昨年の後半からストレートの球威が戻ってきて安定するようになりました。ただ、昨年と比べてスライダーとカーブが良かったというわけではないですよ。真っすぐがしっかり使えることによって、変化球が良かったように見えたのだと思います。でも、実際にはスライダーは投げていないんですよ。あれはもともとカットボールとして使っていて、その中で曲がりが大きいものを後半戦から多く使うようになりました。スライダーとカットボールのちょうど間くらいの球ですかね。

――意識としてはカットボール。

涌井 前半戦まではいわゆる球速が速く、内野ゴロを打たせるカットボールしか使っていなかった。もともと投げていたので練習したわけでもないですよ。昨年の後半から田村(龍弘)と組むようになり、そのころから自分で勝手に投げていたのですが、非常に文句を言われました(苦笑)。「そうやって勝手に投げられたら捕れない」と言われたので、最終的には新しくサインをつくりました。

――田村選手は年下ですが、はっきり口にするタイプですね。

涌井 そうですね。すぐ調子に乗るので。それでも・・・

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