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Vol.23 上原健太(明大・投手) 将来性は10点満点、1位競合も有力な即戦力左腕

 

1学年先輩の山崎福也(現オリックス)がプロ入り。上原健太は明大のエース背番号「11」を譲り受け、文字どおり、今年は大黒柱としての役割が期待される。将来性は文句なしの大型左腕だ。

 大学生投手では、駒大・今永昇太(4年・北筑)と双璧と言える即戦力の左投手。今年は3月に左手人さし指の裂傷で出遅れ、リーグ戦開幕は本調子ではなかったが、将来が楽しみな大型左腕だ。順調にいけば1位指名されるレベルだろう。


 投球フォーム(9.0)は、上半身と下半身のバランスが良い。踏み出す右足のヒザも折れないし、リリースポイントも一定で投げられている。大学では1年時から神宮のマウンドを経験しているが、フォームは年々良くなっている印象だ。あれだけの長身でも上下の連動がうまくできる投手はプロでも少ない。ヒジの位置が高く上がっている点も素晴らしい。

 ストレート(9.5)は角度があって、キレもある。左投手は右投手に比べて球速は「5キロ増し」などと言われることがあるが、上原は150キロ前後の球速を誇る。変化球(8.5)で一番いい球はスライダー。横に滑るというよりも縦に割れるような軌道が特徴だ。一方でフォーク系の縦変化の精度はまだまだ甘い部分がある。あとはもう少し緩いカーブを織り交ぜていけば、投球の幅が広がる。

 制球力(8.5)はまずまず。スライダーを両サイドに集める力はあるが、精度はまだ高くない。直球は左投手特有のクロスファイアと呼ばれる右打者の内角球の精度を高めてもらいたい。アマチュアでは投げミスをしても打ち取れるが、プロではそうはいかない。特に先発として投げる際には2巡目、3巡目でより細かな制球力がないと苦しくなる。基本的には直球が軸になるが、投球術(8.5)も優れている。あれだけの球威を持っているので、緩いカーブを自在に操れれば、打者からすれば厄介な組み立てとなる。

 投手守備(8.5)で言えば課題はある。大柄なだけに、バント処理で腰が高く入るシーンが目立つ。各塁への送球の強さも、もう少し欲しいところだ。今後は日々の練習でノックを受けたりバント処理を入れてもらいたい。毎日続けることで下半身の鍛錬にもなる。また、一塁方向へ打球が飛んだら反射的に一塁のベースカバーに走ることも体に覚えさせてもらいたい。

 マウンドでの投げっぷりを見ると、メンタル(9.0)は強そうに映る。ピンチの場面でも顔色を変えずに、普段どおりの投球ができることは強みだ。打者に向かっていく姿勢もある。下級生のころに比べて精神的にタフになったと思う。体力(9.0)はまだ未知数な部分もある。1試合を一人で投げ切ることで投げる持久力が付いたり、ペース配分なども分かってくる。今年1年間、リーグ戦では1試合を投げ切ることを意識してほしい。

 開幕カードの東大戦は5回で降板したが、相手の狙いを外す変化球攻めを見せた。クレバーな一面もあり総合力(9.5)は高い。身体能力も高く将来性(10.0)は満点だろう。今永とはタイプが正反対。各球団のスカウトや球団首脳、現場の印象はさまざまだと思うが、いずれにしても即戦力の実力は持ち合わせている。秋のリーグ戦までイニング数を増やしていければ、1位で競合してもおかしくない素材だ。

■採点表
投球フォーム 9.0
ストレート 9.5
変化球 8.5
投球術 8.5
制球力 8.5
守備力 8.5
メンタル 9.0
体力 9.0
将来性 10.0
総合力 9.5
合計 90.0
※採点の基準は2015年のドラフト対象選手

PROFILE
うえはら・けんた●1994年3月29日生まれ。沖縄県出身。190cm86kg。左投左打。沖縄・あげな中時代はオールうるまボーイズに所属し、広島・広陵高へ越境入学。高校では1年夏からベンチ入りし、2年春夏に甲子園出場も登板なし。2年秋からエースとなり、同秋は県4強で敗退。3年夏は3回戦敗退で甲子園出場はならず。明大では1年春から登板機会を得て、同秋にはリリーフ、先発で3勝を挙げる。2年になると、主にリリーフとして春秋連覇に貢献。3年春は4試合に先発し1勝止まりも、同秋は7試合で3勝。28イニングを投げ失点わずか3。0.96で防御率1位となり、秋制覇に貢献した。
プロフェッショナルレポート

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元巨人チーフスカウトで現在はベースボールアナリストとして活動する中村和久によるドラフト候補生の能力診断。

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