週刊ベースボールONLINE


Vol.41 小笠原慎之介(東海大相模・投手) 1年目デビューもある高卒即戦力

 

正真正銘の高校生No.1投手となった小笠原慎之介。今夏の甲子園で45年ぶり2度目の全国制覇へ導いたサウスポー。実績は申し分なく、ドラフトでも最上位で指名される可能性は高まった。

 今夏、甲子園で優勝投手になった。仙台育英との決勝では6失点しながらも、最後までマウンドを守り抜いた。打ち込まれても自分を見失わずに投げられていたのが印象的だった。左でこれだけの真っすぐを投げられる投手は、プロでも少ない。高卒1年目から一軍に出てくる可能性もあることから、今秋ドラフトでは人気を集めそうな好素材だ。


 まずは投球フォーム(9.0)。変なクセがなく、バランスもいい。欲を言えば、もう少し軸足となる左足にしっかり体重を乗せてから打者に向かっていくことが理想だ。右肩の開きを抑えるためにグラブをやや高く上げている点はいいが、まだ我慢しきれていないことがある。この2点を改善していけば、安定感は今まで以上に出てくる。まとまっているだけに、もっとダイナミックに躍動感のある投げ方になってくれば面白い。

 一番の魅力はストレート(9.0)。甲子園で150キロの大台を超え、観客を魅了した。高校生ではなかなか打てないのも無理はない。常時140キロ台中盤の球速を出していたのも特筆すべき内容。変化球(8.5)は主に2種類。春先まではスライダー中心だったが、この夏は右打者にも左打者にもチェンジアップを多く使うシーンが目立った。特に左打者の外角に決まる球は、スライドしながら沈む変化になっていた。

 制球力(8.5)はまずまず。どの球種でもストライクが取れるのは高校生としては及第点。右打者の内角へのクロスファイアーの威力は素晴らしいものがあるだけに、もっとここへ投げ込む姿を見たい。クロスが決まってくれば、打者を打ち取る組み立ての幅が広がる。投球術(8.5)にもつながってくるが、追い込んでから決め球がファウルされる場面が多いのは、内角球が少ないことも一因だろう。

 投手守備(8.5)ではバント処理の動きで一歩目のチャージが甘いところがある。先の塁で刺すことを頭に置いて練習に取り組んでもらいたい。クイックもまだまだレベルアップできる。一塁へのけん制はさまざまなパターンがあっていい。二塁走者に対してのけん制は、走者を刺すためだけではなく、走者のリードを少しでも狭めて、1ヒットでの生還を許さないためにも必要。試合の流れを読んで、けん制を入れるタイミングも勉強してほしい。

 打者に向かう姿勢がありメンタル(9.0)は強い。特に得点圏に走者を背負った場面ではギアを上げて投球する。気迫がボールに伝わっていたのはプロでも大事な要素になってくる。

 体力(9.0)の不安はない。試合の終盤にも150キロ近い球を投げ込んでいたし、肩のスタミナも十分。下半身も強そうだが、軸足にもう少しタメをつくるためにももっと強化することが必要だ。

 総合力(9.0)、将来性(9.5)は高い。左投手であれだけの球威がある球を投げられれば、プロでも先発としてやっていけるだろう。古くは江夏豊、最近では中日大野雄大のようなパワーピッチャーだ。1年目から先発ローテーション候補に挙げられるだけに、ドラフトでは数球団が1位競合しても驚かない。

■採点表
投球フォーム 9.0
ストレート 9.0
変化球 8.5
投球術 8.5
制球力 8.5
守備力 8.5
メンタル 9.0
体力 9.0
将来性 9.5
総合力 9.0
合計 88.5
※採点の基準は2015年のドラフト対象選手

PROFILE
おがさわら・しんのすけ●1997年10月8日生まれ。神奈川県出身。178cm 83kg。左投左打。小学1年時に善行野球スポーツ少年団で投手として野球を始める。善行中では湘南クラブボーイズに所属し、3年夏にジャイアンツカップ初優勝に貢献。東海大相模高では1年春からベンチ入りし、2年夏の甲子園では1回戦の盛岡大付戦で救援登板。同秋から背番号1を着け、今夏は右腕・吉田凌とともに2年連続甲子園出場へ導き、45年ぶり2度目の全国制覇。最速151キロ。変化球スライダー、ツーシーム、カーブ、チェンジアップ。
プロフェッショナルレポート

プロフェッショナルレポート

元巨人チーフスカウトで現在はベースボールアナリストとして活動する中村和久によるドラフト候補生の能力診断。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング