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第6回 グローバル展開への課題――世界的な普及につながる五輪復帰

 

 アマ野球を統括する全日本野球協会(BFJ)の鈴木義信副会長が12月11日、東京都千代田区の日本野球機構(NPB)を訪れ、井原敦事務局長に2020年東京五輪での野球の競技復帰について、プロ側に協力を要請した。

 ソフトボールとの統合団体を新設し、五輪競技への復帰を目指した野球だったが、9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会での実施競技入りは認められなかった。だが、IOC新会長に選出されたトーマス・バッハ氏が、競技復帰の可能性が消滅していないことを示唆し、状況は変わりつつある。鈴木副会長は「プロ側と情報を共有しながら、一体となる。何とか(復帰への)道を探りたい」と述べ、復帰活動への仕切り直しを誓った。

 開催地が東京に決まったことが、復帰への追い風となりそうだ。資金力のある日本のスポンサーや放映権など収益を見込める人気競技の野球は、IOCにとって無視できない存在となった。野球が悲願の五輪復帰を果たせるならば、国際化に向けて計り知れないメリットとなる。

ソフトボールとの統合団体を新設し、五輪競技への復帰を目指した野球だったが9月のIOC総会で落選が決定。しかし、20年五輪の開催地が東京に決まったことで復活の可能性が出てきた[写真=高塩隆]


 野球のグローバル展開は、NPBが来年のプロ野球80周年の目玉として位置付ける「侍ジャパンプロジェクト」にとっても重要な課題だ。世界的なイベントは現在、17年に開催予定のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だけ。野球の五輪復帰が具体化してくれば、15年に開催すると見られる国際野球連盟(IBAF)の12カ国・地域によって争われる「プレミア12」(仮称)など各種国際大会への道筋をつけ、世界的な普及につながる。

 国際試合の創出は、侍ジャパンにとって必須事項だ。将来的には最高峰であるメジャー・リーグとのマッチメークが理想ではあるが、まずは台湾、韓国などアジア圏の環境整備が重要となってくる。 小久保裕紀監督が率いる新生侍ジャパンの初陣は、今年11月の台湾(台北)での同代表との強化試合となった。台湾代表は台湾アマ球界を統括する中華台北野球協会(CTBA)がチームを編成し、メジャー傘下のマイナー・リーグ所属の選手が中心だった。台湾プロ野球(中華職業棒球大連盟=CPBL)所属の選手は一人も参加していない。

 CTBAとCPBLは現在、対立関係にある。過去に見られた日本のプロアマの構図に近いが、それ以上に感情的な溝が大きい。

 部外者が口出し無用のデリケートな問題だが、侍ジャパンプロジェクトを成功させるためにも、NPBは台湾両団体への細心の対応を迫られている。

 11年に3年ぶりに台湾(台中)で再開したアジア・シリーズ以降、NPBはCPBLと“蜜月関係”にあった。昨年3月にはCPBL選抜チームが来日し、東日本大震災復興支援試合として、秋山幸二監督率いる侍ジャパンと対戦。お互いを“盟友”と位置付けていたが、11月の台湾遠征の相手がCTBAだったことが、CPBLとの関係を微妙なものとさせた。「もちろん関係が壊れるということはないが、今までの付き合いを考えれば、正直言って愉快なことではない」と、あるCPBL関係者は複雑な心境を吐露する。

 いかに摩擦なく関係各国・地域との付き合いができるかも、侍ジャパンが目指す世界進出に向けての大事なテーマとなる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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