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第36回 オールスターの意義――顔見せ興行からの脱却が盛り上がるポイント

 

 マツダオールスターゲーム2014(7月18日・西武ドーム、19日・甲子園)のパ・リーグ選抜の監督に、ロッテ伊東勤監督が就いた。昨年のパ優勝の楽天星野仙一監督が体調不良のための代わりの選任で、伊東監督のオールスターでの指揮は、西武時代の05年以来9年ぶり2度目。コーチには西武の田辺徳雄監督代行、楽天の大久保博元監督代行と、“代役”尽くしの異例の首脳陣となった。

 伊東監督の就任までには二転三転の経緯があった。星野監督は5月末に持病の腰痛が悪化。胸椎黄色靱帯骨化症と腰椎椎間板ヘルニアと診断、6月中旬に手術をして休養に入っている。30日に全パ監督を辞退し、当時楽天の監督代行だった佐藤義則投手コーチが指揮を執ることが決まったが、7月2日に楽天監督代行が大久保二軍監督に交代。再び星野監督が全パ監督になることになったが、12日に星野監督サイドが「体調回復が間に合わない」として再度辞退を表明。パは伊東監督への監督要請をした。

 楽天の“ドタバタ劇”に振り回された形となった。星野監督の最初の辞退は仕方ないとしても、その後の佐藤コーチから大久保二軍監督への監督代行職が移る電撃人事、そして2度にわたる全パ監督変更など前代未聞の騒動となった。一説には、佐藤コーチから大久保二軍監督へのチームの全権委譲は、将来を見越しての三木谷浩史オーナーの強い意向が働いているという。年に一度の球界の祭典のリーダーを任された球団としては、タイミングの悪いお粗末な演出をしたと言われても仕方ない。

 伊東監督にしても、愉快な話ではなかっただろう。パの村山良雄理事長(オリックス連盟担当)は「伊東監督には気持ち良く引き受けていただいた」と語ったが、実際は違う。「『気持ち良く』なんかじゃない」と伊東監督はコメント。三顧の礼をもって頼まれたのならまだしも、楽天の“お家騒動”を見せつけられた後の就任だけに、納得いくはずもない。

 オールスターのステータスが年々薄れつつある。テレビ視聴率の低下などファンの関心はもちろん、球団をはじめとした関係者の「盛り上げよう」とする意識の低さが気掛かりだ。このときでなければ見ることのできないセ、パのスターたちによる“名勝負”がめっきり減ったのが、大きな原因だろう。最近は、選手によっては「できればオールスター期間は休みたい」と公言する者もいる。

 オールスターの意義をもう一度見つめ直す時期が来ている。よく言われている10年目を迎えた交流戦も、球宴の価値を落とす要因となっているのか。短絡的に判断するのではなく、包括的に、綿密に検証・分析すべきだろう。何よりも日本野球機構(NPB)をはじめ、各球団のサポート体制が大事となってくる。

▲昨年の球宴第1戦表彰式より。オールスターの価値を高めるために、NPB、12球団が一体となる必要がある[写真=小山真司]



 オールスターは現在、秋の新人選択会議(ドラフト会議、今年は10月23日)のセ、パのウエーバー順の指名優先権が懸かった勝負となっており、今後も新たな価値を創出することが必要だろう。外国人選抜と日本人選抜による対戦、「U26」と27歳以上選抜など年代別や東西対抗など、シーズンの延長上ではないカードを検討してはどうだろう。単なる顔見せ興行からの脱却が、オールスターを盛り上げる大きなポイントとなる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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