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第41回 唐突だった交流戦削減――違和感を抱かずにいられないファン不在の議論

 

 セ・パ両リーグによる交流戦が現行の24試合から18試合に削減されることが決まった8月11日、セから「来季日程に関するセ・リーグの考え」と題された書面が出された。

 内容は、リーグ戦の日程の危機と国際試合、新たな日程案の利点、今後の課題──の3点。ドーム球場がパよりも少ないセは、交流戦の雨天中止で8月以降のリーグ戦スケジュールが過密となり、打ち切りの可能性が出ると指摘。交流戦を18試合にすれば変則的な2連戦から本来の3連戦で組め、日程をコンパクトにすることで、来年11月に開催する国・地域別対抗戦「プレミア12」など国際大会に余裕を持って参加できると説明している。

 交流戦に関しての議論内容については、詳細はこれまで明らかにされなかった。セ、パ両者の言い分や話し合いの過程が公表されなかったため、ファンにとっては削減の発表は唐突感があったに違いない。各球団は「ステークホルダー(利害関係者)への配慮」として、導入当初からスポンサーとなっている日本生命への気遣いを口にし、試合数を「減らしたい」セと「現状維持」のパとも、意見と根拠は伏せ続けた。

▲観客動員も好調でファンの支持を受けていた交流戦。しかし、球団の都合で来季から試合数削減となってしまった[写真=内田孝治]



 セ、パは、ともに巨人阪神戦など人気カードを1試合でも多くしたいという本音がある。集客力だけではなく、放映権料などが下がってきたとはいえ、その付加価値は侮れない。勘ぐるならば、その限られた牌を奪い合う生々しい争いを表に出したくないという考えがあったのかもしれない。

 そんな中、巨人の親会社である読売新聞が8月5日付朝刊で、交流戦の問題点を掲載。18試合制の妥当性を訴えた。巨人にしてみれば、セの他球団だろうと、パ球団だろうと、どこと対戦してもあまり変わりはない。だが、かたくなに現状維持を主張し続けたパと対峙していたセの他球団にしてみれば、このアピールは絶好の援護射撃だったはずだ。これが奏功したのか、セの全面勝利となる18試合制に押し切る形に決着。かつての勢いを失っていた感のあった巨人も存在感をクローズアップでき、今後も球界に影響力を及ぼすことになりそうだ。

 今回の問題は、「ファンの声は反映されたのか」ということだ。これまでのプロ野球界は、制度改革などのほとんどが“密室”で決められてきた。一般社団法人日本野球機構(NPB)の定款では「野球が社会の文化的公共財である」と定めているが、またも球団とリーグの都合が優先され、ファン不在の議論により決められたという感が否めない。

 一方のパも「ファンの支持がある」の一点張りで、日程問題を包括的に盛り込んだ理論武装とはほど遠い観点からの主張だった。もっと具体的で丁寧な説明があれば、本当の意味での支持を各方面から得られ、違った結果が出たかもしれない。

 両リーグの思惑がぶつかる交流戦については、前もってNPBが音頭を取り、識者やファン代表らが出席する討論会や公開アンケートなど、客観的な意見の集約がなされてもよかった。統一球問題の第三者委員会は、NPBのガバナンス(組織統治)の欠如を指摘したが、同時に独特の隠ぺい体質にも触れている。旧態依然とした球界から脱却し、真に開かれたプロ野球を目指すことが、結果的にはファンの賛同につながる。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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