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第58回 課題の多い五輪復帰――主催国として日本の責任は重大

 

 国際オリンピック委員会(IOC)は12月8日、モナコで臨時総会を開き、五輪開催都市が追加の実施競技・種目を提案できる方式を承認。2020年の東京五輪で野球とソフトボールが復活できる道が開けた。これを受け、全日本野球協会(BFJ)の鈴木義信副会長らと日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーらが12日、東京都内で今後の対応について協議。復帰に向けての対策委員会を立ち上げることで一致した。今後、ソフトボールと足並みをそろえながら、来年7月のIOC総会(クアラルンプール)での正式決定に向け、復帰に全力を注ぐことになった。

 五輪復帰の可能性が大きく広がったことは、プロ野球界にとっても、これ以上もない吉報となった。最も権威のあるスポーツの祭典の正式種目となれば、除外により危ぶまれていた国際的な普及を盛り返すことができる。日本代表「侍ジャパン」を常設化した日本にとっても、活動の幅をより広げやすくなる。

2008年、星野ジャパンで臨んだ北京以来の野球五輪復活となりそうな情勢だが、課題は多い[写真=BBM]



 ただ、その道程に課題も多い。大会期間中は夏休みとなり、プロ野球にとってはペナントレースの佳境を迎えるかき入れ時。中断するのかどうするのか、それを含めた興行面のデメリットをにらみながらの日程作成が難しい。選手派遣も一定チームに偏ることを嫌う球団が出てきて、真の「ドリームチーム」を編成できるかどうか不透明だ。

 また、会場問題は大きなハードルだ。天候に左右されないドーム球場がベストだが、場内の広告などIOCの基準は厳しい。期間前後に広告を外すことをスポンサーが納得するのか。また、補償金が発生した場合の対応など、各方面の調整が必要となる。

 復帰アピール活動の際、IOCが求める試合時間短縮に対して世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が提示した「7イニング」と「タイブレーク」の2制度の採用についての議論も早急に行わなければならなくなった。タイブレークはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも適用されているなど、関係者の抵抗は少ない。

 一方、7イニングは国内外で反発する声も多い。「駆け引き後の打順3周目あたりが見どころとなる」「9イニングだからこそ投球継投の妙が出る」──など、球界関係者の意見がある。「野球ではなくなる」という声も多い。

 対して、星野仙一楽天監督をはじめとした「まずは、どんな形でも五輪に復帰することが大事」という主張もある。

 BFJでは、15年の社会人の一部大会で7イニング制を実施する意向を示唆。五輪に向け、理解を求めたい考えだ。

 鈴木副会長は「試合時間の目安は2時間半」としている。

 6年後に照準を合わせ、プロとアマが一体となった協力が不可欠だ。以前、五輪除外の遠因となったメジャー・リーグ機構(MLB)の選手派遣に消極的な姿勢も改めてもらうよう先頭に立って働きかけることも、主催国として、野球先進国としての責任だろう。

 うまく事態が進めば、正式復帰は7月のIOC総会で決まる可能性がある。それまでに、またそれからも取り組むべきことは多い。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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