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第70回 1年中戦力とならないキューバ人選手――選手獲得のためのきっちりとしたルール作りを!

 

※本コラムは3月27日に公開されたものとなります。

 昨年、スポーツ選手の国外でのプロ契約を解禁したキューバから、今年も引き続いてプレーするユリエスキ・グリエル(DeNA)、アルフレド・デスパイネ(ロッテ)ら複数の選手が参加する。グリエルは昨年、62試合で打率.305、11本塁打、30打点。デスパイネは45試合で.311、12本塁打、33打点と、ともに“野球王国”の実力を発揮。DeNAの中畑清監督が「残留してくれてありがたい」と語ったように、野球王国から来た助っ人はかけがえのない戦力となっている。

 だが、キューバならではの特殊な契約や、現在置かれている国際状況など、日本にとっては問題も多い。グリエルはキューバ国内リーグを優先する取り決めのため、春季キャンプとオープン戦は不参加。3月27日の公式戦開幕も間に合わず、チームの合流は4月中旬を予定している。

 7月から約1カ月間はキューバのナショナルチームが参加する国際試合に出場するため、その期間はチームから離れるという。夏場の大事な時期の主力の欠場はチームにとって致命的にも思える。あるセ・リーグ球団の幹部は「ウチを含めた日本の複数球団が獲得に興味を示したが、キューバ側が示した条件がネックになって獲得を断念した」と証言する。しかし、解禁初年度に存在感を示したグリエルの残留を望んだDeNAは、条件をのまざるを得なかった。同じ条件のデスパイネに対しても、ロッテは容認する方針となっている。

 日本球界は、キューバ選手獲得の恒常化を長年熱望していた。過去、巨人中日がキューバと熱心なパイプ作りに励んだ時代もある。だが、社会主義という特殊な体制もあり、スムーズにはいかなかった。そういう意味でも昨年の突然の解禁は、日本球界に衝撃を与えた。「将来を含め、選手を獲得できる状態にしたい」(パ・リーグ球団幹部)というのは本音だろう。

 グリエルの今年の年俸が3億5000万円、デスパイネが同2億5000万円プラス出来高(ともに金額は推定)。メジャー・リーグから獲得する選手と比べても、決して安い数字ではない。それなのに、日本でのプレーが最優先ではない条件含みの契約は妥当なのか疑問だ。受け入れる側(球団)の自由であり、大きなお世話なのかもしれない。だが、ペナントレースの奪取を願い、応援するファンにしてみれば、諸手を挙げて「賛成」というわけにはいかないだろう。

DeNAにとって大きな戦力となっているグリエル。フル出場できないのが悩ましい[写真=大賀章好]



 これからの課題は、キューバとの間に選手獲得のための日米間協定のようなきっちりとしたルールの確立だ。現在の獲得方法は、選手の獲得を希望する日本の球団が、キューバ側と希望選手を伝えて直接に交渉。条件が折り合えば、日本でのプレーが可能となる。だが、この取り決めは明文化されておらず、かなりあいまい。「代理人が複数介在しており、キューバ政府側のチャンネルも一本化されていない。さらにマネーゲームが進み、トラブルが起きる」と、ある関係者は眉をひそめる。

 グリエルやデスパイネの契約内容が今後の“先例”となっていいのか、日本球界が考える時期に来ている。アメリカがキューバとの国交正常化交渉を進める中、結果次第では野球を含むスポーツ界に影響するのは間違いない。流動的な国際状況も見据えながら、どのようなルールがいいのか、国際部を新設した日本野球機構(NPB)がリードし、12球団がじっくりと対策を練るべきだろう。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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