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第73回 求められる画期的な策――運営側と現場が時短にどれだけ覚悟を共有できるか

 

 プロ野球では今、スピードアップが最大の懸案事項となっている。昨年の1試合(9回)平均時間は3時間17分。今年はセ、パ各リーグの5カード終了(4月13日)時点で、3時間11分と6分の短縮を達成しているが、熊崎勝彦コミッショナーが目標に掲げている「3時間以内」にはまだほど遠い。

 なぜ、スピードアップが必要なのか。それは、試合時間の長期化が、ファン離れの一因となっているからだ。野球人気はメディア露出と密接な関係があるが、特に大きな影響を及ぼしているのがテレビ放映。関係者によると「特に地上波の場合、3時間を超える枠は無理」という。最近は、オールスターゲームですら放映延長は難しいご時世。試合を2時間台に収めることは、関係者の悲願となっている。

 巨額な放映権料が動くメジャー・リーグ機構(MLB)では、今年から本格的なスピードアップ策に乗り出している。攻守交代時間、投球練習などの短縮を徹底し、打者が打席を外すことを制限。違反者にはペナルティも科される。国際オリンピック委員会(IOC)は、野球を正式競技から除外した理由の一つとして、試合時間の長さを指摘している。2020年の東京五輪での開催も絡み、時短は最優先課題なのだ。

時短に強いこだわりを見せる熊崎コミッショナー。3時間以内の目標達成を現場としっかり共有する必要がある[写真=BBM]



 実際にボールが動いていない時間の冗漫さを排除するため、日本野球機構(NPB)ではガイドラインを定めている。抜粋すると、

(1)攻守交代は全力疾走。
(2)投手は(無走者時)捕手からの返球を受けて15秒以内に投球。
(3)打者は予備のバットを必ずベンチ内に用意。
(4)バッターボックスは絶対に外さない。
(5)むやみにタイムは要求しない。
(6)遅延行為はファンに対する侮辱行為。

 などがあるが、目に見えた効果を発揮しているとは言い難いだろう。ある球団のヘッド格コーチは、「特に試合中は、スピードアップのことは意識しない。勝つことが最も優先されるし、それは時短と相反する場合もある」と話す。

 時短には、これまでとは違う画期的な策が求められる。例えばスポンサーが重要視するイニング間の時間だが、何もCMを放映する分をきっちり空ける必要はない。画面が試合に切り替わってから画面下にテロップや二画面(ワイプ等)で対処するなどの工夫も可能。知恵を出し合えば、時間を大幅にカットすることができる。

 端的な時短を望むなら、ストライクゾーンを広くすればいい。外角と低めだけでも、ボール半個分広げただけで、絶大な効力を発するはずだ。ゾーン拡大はバッテリー有利に働くという説が一般的だが、一方の打者には「追い込まれて微妙なボールをストライクと判定される前に打つ」という意識が生まれる。投打ともに早いカウントでの勝負となり、必然的に試合時間の短縮につながる。両チームの仕掛けや駆け引きも、これまで以上にアグレッシブとなるはずだ。

 ゾーンぎりぎりの際どいボールを、審判が「ストライク」と判定する勇気も必要だろう。過去、大事な局面でもめることも多かっただけに、審判団に名実ともに絶対的な権限を持たせることが大切。審判への違反行為には厳しいペナルティを科すことも、トラブルを未然に防ぐ対策となる。要は、運営側(NPB)と現場(ユニフォーム組)が、どれだけの覚悟を共有できるかに懸かっている。より効果的なスピードアップを達成するための、コミッショナーの確固たるリーダーシップが問われている。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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