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第78回 外国人枠は必要か――「オール外国人チーム」の実現など、可能性を広げる枠撤廃は“あり”

 

 環太平洋連携協定(TPP)交渉が、最終局面に入った。貿易自由化などが目的で、輸出額が増え、安価な海外商品を購入できることなどがメリット。だが、農業をはじめ国内産業が打撃を受けるとして、関係者の反発もあり交渉は難航した。

 TPP交渉は、プロ野球がたどった外国人枠をめぐる攻防に似ている。まだ日本とメジャー・リーグ(MLB)の実力差が大きかった1950年代、外国人選手の無制限の日本球界入りは「日本選手がもらうべき年俸と出番が奪われる」とされた。日本側は保護策として、登録できる外国人の枠を支配下選手3人(出場選手2人)と設定。それから徐々に緩和され、2002年からは出場選手が最大4人まで(うち投手も野手もそれぞれ3人までベンチ入り可能で、4人全員を投手、または野手にすることはできない)と枠が広がった。

 3月28日にヤフオクドームで行われたソフトバンクロッテ戦で、外国人枠が話題になった。試合はソフトバンクが勝利し、先発のジェイソン・スタンリッジが1勝目を挙げ、ホールドがエディソン・バリオスデニス・サファテにセーブが付いた。打っては、五番の李大浩が1安打1打点。4人の外国人選手が、白星に貢献した。

3月28日、勝利したソフトバンクだが勝ち投手のスタンリッジをはじめ、4人の外国人が活躍。助っ人の力はチームにとって必要不可欠だが、枠を広げることを考えてもいいのでは?[写真=湯浅芳昭]



 ソフトバンク二軍には、韓国サムスンで昨年最優秀防御率と最多奪三振を獲得したリック・バンデンハークも控えている。外国人枠のために一軍での出番がないのが現状だが、「もったいない」と思うのは、工藤公康監督ばかりではないだろう。

 今年の外国人最高年俸は、マット・マートン(阪神)の4億6000万円。以下、李大浩の4億円、ウラディミール・バレンティン(ヤクルト)らの3億円と続く。対して、日本人の最高年俸は阿部慎之助(巨人)の5億1000万円を筆頭に、金子千尋(オリックス)と杉内俊哉(巨人)の5億円と、助っ人を大きく上回る高額年俸者がいる。フリーエージェント(FA)制の影響で日本人選手の年俸が高騰したこともあるが、少なくとも外国人選手だけが球団の財政を圧迫している状況ではない(金額は推定)。

 ドミニカ共和国に目を向けた中日のように、“安価な助っ人”の獲得へシフトしてきた球団もある。もし外国人枠を撤廃したら、すべてのチームが外国人だらけになる可能性はあるだろうか。短年契約の外国人選手は、解雇がしやすいという、球団にとって都合のよい面もある。だが、すべてのポジションを奪われてしまうというのは杞憂だろう。

 球団の地域密着度が増し、地元出身者をはじめとした日本人選手への愛着を感じるファンも多い。枠が撤廃されても、球団は極端には走らないだろう。ある程度の外国人選手を獲得すれば、興行的な観点から“ブレーキ”が掛かるはずだ。極端な外国人偏重の球団に対しては、日本人選手も敬遠するだろうし、FAやドラフト戦略も厳しくなる。それに、日本人もレベルアップし、外国人に対抗できるだけの地力を付けてきた。

 楽天の三木谷浩史オーナーのように「外国人枠を緩和し、メジャーに対抗できるリーグを作るべき」という意見を持つ首脳もいる。個性的な「オール外国人チーム」の実現など、可能性を広げるための枠撤廃は“あり”だろう。TPPではないが、野球のグローバル化にも多少のデメリットが伴う。革新性を見据え、踏み出す勇気があるかどうかだ。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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