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第84回 格差を生む“何か”――分の悪さの言い訳にはならない、セはプロとして何らかの対策を!

 

 リーグ戦が再開されたばかりのセ・リーグで、6球団すべての貯金が「0」となる事態が起こった。6月22日時点で、首位巨人の勝敗は35勝34敗。翌23日の中日戦(東京ドーム)で敗れたため貯金がなくなり、広島戦で引き分けた2位の阪神と勝率5割で並んだ。同一リーグですべての球団が勝率5割以下を記録したのは、プロ野球81年の歴史で一度もない。その原因となったのが、直前まで行われていたパ・リーグとの交流戦だ。

 導入11年目の交流戦は、12球団が優勝を争う形式ではなく、今年からセ、パ両リーグの対抗戦に変更。結果は61勝44敗1分けとパの圧勝だった。6月14日には8年ぶりに全6試合でセがパに敗れるなど、勝率トップのソフトバンクから上位5位までをパ球団が占拠。セに対し、力の差を「これでもか!」とばかりに見せつけた。

交流戦では圧倒的な力を見せてMVPに輝いた柳田ら、パの選手の能力の高さが目立った[写真=湯浅芳昭]



 交流戦の球団個別の勝敗は、リーグの勝敗にそのまま反映される。リーグでの順位変動は目立たないが、パ球団に負け越したセ球団は相対的に勝率が下がった。セが持つ星がパに食われ、珍現象を引き起こした。

 6年連続でパが勝ち越している事実からも、両リーグの力の差は明白。かつて日本ハムダルビッシュ有楽天田中将大岩隈久志らメジャー・リーグに挑戦した「スーパー・エース」が多く在籍していたことで、パの優位が語られたことがあったが、今はそれだけが要因とは言えなくなった。セ、パの間には、選手の本来が持つ能力だけではない、格差を生む“何か”がある。

 セの劣勢は、現場も感じている。「パは強い。バッターの振りが違う」と打撃のパワフルさ強調したのは、ヤクルト野村克則バッテリーコーチ。早いカウントからの積極的な強振を前に、受け身にならざるを得なかったという。また、セで唯一勝ち越した阪神のトーマス・オマリー打撃コーチ補佐は「メジャー・リーグのようにアグレッシブで、速球中心の配球にやられた」とバッテリーの攻め方の違いを指摘。今年からストライクゾーンが広がったこともあり、内角に力で押し込むパの投手の攻略の難しさを挙げた。

“野球の違い”が出るようになったのは、さまざまな理由があるだろう。指名打者(DH)制採用で、投手のレベルが高くなる、という以前からある説も一理ある。東京ドームなど比較的本塁打になりやすい狭い球場が多いセでは、投手がゴロを打たせるために低めの変化球を多投する傾向がある。パはフェンスが高い広い球場を背景に、投手が思い切り投げる攻めの投球ができるなど、パワフルなプレーを磨くための環境がある。また、「身体能力の高い選手で外野の守備を固めるなど、基本部分をおろそかにしていない」という声もある。複数の要因が絡み合い、パの野球がレベルを上げていったのは確かだ。

 セにしてみれば、リーグ戦よりも長距離を移動しなければならなくなり、慣れないDH制も実施する交流戦だが、条件は一緒。分の悪さの言い訳にはならない。プロフェッショナルとしての、何らかの対策はあるはずだ。

 セの強い意向で、今年から交流戦の試合数が24試合から18試合になった。さらに削減したいセだが、このままでは「勝てないからやりたくないのでは」と揶揄されるだろう。一方的な削減を主張する前に、まずは前向きに対峙し、プライドある“強いセ”を確立してほしい。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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