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第85回 もうひとつの世界一決定戦――プレミア12をいかに盛り上げるか、野球先進国である日本の役目は大

 

 2年後に第4回大会が行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と並ぶ、もうひとつの“野球世界一決定戦”が、今秋に開催される。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のランキング上位12カ国・地域による「プレミア12」で、11月8日から同21日まで日本と台湾で開催。1次ラウンドでは6チームずつA、Bの2組に分かれ、B組の日本はアメリカ、ドミニカ共和国、韓国、ベネズエラ、メキシコと戦う。A組には、キューバ、台湾、オランダ、カナダ、プエルトリコ、イタリアが入った。

 日本は8日の札幌ドームで行う開幕戦で韓国と戦う。台湾に移動した後、メキシコ、ドミニカ共和国、アメリカ、ベネズエラの順に対戦。1次ラウンドでA、Bそれぞれの組の上位4チームが台湾での準々決勝に進み、東京ドームで準決勝と決勝が行われる。日本代表「侍ジャパン」の小久保裕紀監督は6月22日、東京都内で記者会見し、「タフな戦いになる。最強チームをつくり上げ、日本の野球の強さを証明したい」と語った。

 WBSC主催のプレミア12は、アマ野球を統括する国際野球連盟(IBAF)が主管。WBCが開催される中間年に実施することが決まっている。WBCはメジャー・リーグ機構(MLB)とMLB選手会が運営などを一手に担い、利権を握る商業イベント的色合いが強い。一方のプレミア12は、国際オリンピック委員会(IOC)傘下のIBAFが主導。プロ選手が参加できる大会ではあるが、ニュートラルな大会だと言える。グローバル化や五輪の正式競技復帰に向けてのアピール度も大きい。

 この新設された世界大会は、WBCに比べると、残念ながら一般的に浸透しているとは言えない。いかに盛り上げ、大切に育てていくかが野球界の役目であり、特に野球先進国である日本の責任は大きい。IBAFの下部組織である全日本野球協会(BFJ)はもちろん、IBAFの準会員となっており、トッププロで編成される侍ジャパンを送り出す日本野球機構(NPB)のリーダーシップが問われる大会でもある。

プレミア12に向けて小久保監督率いる侍ジャパンは着々と準備を進めているが、他国は果たして……[写真=川口洋邦]



 日本で開催されることもあり、ビッグイベントとして認知してもらうことが今後の課題だ。MLB主導のWBCとはひと味違う国際大会として、継続性を持たせることが大事。ステータスを確立できれば、WBCへの出場に難色を示しているメジャー・リーガーも無視できなくなる。IBAFとは蜜月関係の日本球界が積極的に参画し、何が何でも成功させてもらいたい。

 これまでの日本代表メンバーは大会ごとに発表されていた。しかし、今回のプレミア12を機会に、NPBの熊崎勝彦コミッショナーは、侍ジャパンのメンバーの一定人数を常時選出する、いわゆる「ロースター制」の導入を決定。7月に候補選手を選び、9月に45人に絞ると発表した。プレミア12は、その中から選ばれた28人が出場選手として登録。常設化された「侍ジャパン」の存在感をファンに植え付けさせ、大会までムードを高めたいという思惑もある。

 侍ジャパンに選ばれることが「名誉」と思える、選手たちの意識も大事となる。選出者にラグビーやサッカーのような“キャップ”を与えて公示したり、フリーエージェント(FA)資格短縮したりするなど、特典を設けることも検討していい。野球の代表常設の先駆けとなった侍ジャパンは、諸国・地域も注目している。その価値を上げることは、国際大会の格上げにつながる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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