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青柳秀俊

 

夏の高校野球埼玉大会は7月10日に開幕するが、最近ではすっかり聞かれなくなった“隠し玉”と呼ぶべき原石がいる。140キロ超を投げ込む本格派右腕。県立校であり、2年秋から投手転向と脚光を浴びる機会はあまりなかったが、今春の県大会でプロの評価も急上昇している。
取材・文=中島大輔 写真=BBM

私学強豪校の四番を真っ向勝負で抑えた1球


 4月26日、プロのスカウトたちが県営大宮公園野球場で熱視線を注いでいた。眼差しの先にいるのは花咲徳栄の四番を任される大瀧愛斗だ。

「投げてきた中で、今までで一番いいボールだったので、体にいい印象が残っています」

 相手の主砲と対峙し、大宮北高のエース・青柳秀俊は思い切り右腕を振った。外角の速球で三振に斬って取ると、スカウトたちは目を見張る。ガンで計ると、140キロの数字が出た。

 その瞬間、青柳は一躍2015年のドラフト候補に名乗り出た。

 投手を本格的に始めてから1年に満たない。身長182センチの逸材が“発芽”することができたのは、“純粋培養”の環境によるところが大きい。

 1956年創立の市立大宮北高は偏差値58ほどで、大学進学を目指す生徒たちの進学先だ。決して野球が強いわけではないものの、部員たちは専用グラウンドで練習できる。

「家から自転車で15〜20分。学力もソコソコあり、グラウンドがいいので、ここで野球をしたいと思いました」

 朴訥に語る青柳にとって、あこがれのマウンドはずっと遠い場所だった。



意欲を引き出す指導で潜在能力が開花


 小学5、6年のころに初めて投手を務めて以来、希望のポジションだ。だが、口にするのははばかられた。進学した植竹中には自分より実力のある投手がいて、主にサードを守った。

 大宮北高に入学して再び投げる機会を得たものの、制球が悪く、間もなくしてクビになる。「投手を続けたい」一方、「自信がなく、結果を出せないと思った」。たまに登板するフリー打撃が楽しかったが「野手の方が自信があった」ので、三塁手や一塁手で打力を発揮した。

 そんな姿をずっと見ていたのが、11年に部長に就任し、14年4月からチームを率いる佐々木秀一監督だ。市川口高時代に高木伴(現オリックス)を指導した佐々木監督は、青柳に「いつかやってくれるだろう」と投手として期待をかけていた・・・

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