プロ野球の歴史を彩り、その主役ともなった名選手の連続インタビュー。第36回は中日一筋で19年間の現役生活を送った木俣達彦氏の登場だ。投手を巧みにリードする名捕手であり、“マカサリ打法”からの豪打で相手を圧倒した強打者でもあった。ON全盛のV9巨人に立ち向かった男が、自らの野球人生を語る。 取材・構成=大内隆雄 写真=BBM 今回でここに登場するレジェンドは36人目となる。うっかり気付かなかったのだが、捕手の登場は初めて。木俣達彦氏の全盛期を知る取材・構成者としては、この連載で取り上げ損なったら大恥をかいてしまうところだった。それほどの大捕手。とにかくものすごいパンチ力だった。だれが名付けたか“マサカリ打法”。村田兆治氏(元ロッテ)の“マサカリ投法”より早い命名だったと思う。
まずもってこの強打から話をうかがうべきところだが、当時の中日のユニークな投手陣とそのボールを受けた木俣氏とのからみ合い(?)に、ひどく興味をそそられるので、そこからうかがってみたい。柿本実、小川健太郎、星野仙一、松本幸行と書けば、オールドファン、中日ファンは舌なめずりをしてしまうのではないか。 柿本、小川のクセのある投手たちのボールを受け捕手の仕事に目覚める
柿本さんには、感謝しているんですよ。プロのピッチャーとは何か、というのを教えてもらいました。まあ、リードに関しては、怒られっ放しでした。しまいには、柿本さんは「もうええワ。オレが自分にサイン出す。ただしパスボールだけはするな。走者は必ず刺してくれ」。ということは、ノーサインで投げるのと同じことです。捕手は何が来るか分からんのですから。これには鍛えられましたねえ(柿本はサイドからのクセ球で62、63年連続20勝。気性の激しい投手で、自責点の問題で公式記録員のところへ怒鳴り込んだこともある)。
それと、柿本さんを見ていて、投手というのは、自分で考えて投げないとダメだということがよ〜く分かりました。捕手任せではいい投球はできんのです。また、捕手のリードなんてタカが知れているのです。投手の投げたいように投げさすのが捕手の仕事なんです。いまのプロ野球の投手は、自分で考えることができませんねえ。いくらデータを与えられたって、状況は瞬時にして変わるんですから、自分で考えんと。
小川さんにも思い出がありますねえ。入団は私と同期で64年。東映で投げていたのですが、やめて社会人の立正佼成会へ。そこから再度プロ入りという珍しい経歴の人です。小川さんは、右のサイドスローですから、王さん(貞治一塁手、巨人)に弱いんです(王には.385と打ちまくられ、これは50打席以上対戦の投手中2番目の高い被打率。68年には打たれた10安打すべてが長打!)。それで小川さんに「木俣、どうすればいいかなあ」と持ちかけられたのが、69年のキャンプでした。私は「とにかく・・・
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