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昨季は3年目で初めて開幕スタメンを勝ち取り、打撃も好調で盗塁を量産と大ブレークの予感を感じさせた。しかし、6月3日のDeNA戦(旭川)で左ヒザじん帯付着部剥離骨折し、長期離脱。復帰後は前半戦ほどの勢いはなく、外野で試されるなどポジションも定まらなかった。不完全燃焼に終わったシーズンからの復活にかけ、攻守にレベルアップを図ってきた男の現在に迫る。
取材・構成=松井進作、池田晋 写真=小山真司

覚悟を持って二塁の練習に取り組んだ

──昨年は大きなケガをしましたが、それを乗り越え、今年はどんな年にしたいですか。

西川 去年は相当な意気込みで臨みましたが、調子のいいときにケガをしてしまい、悔しい気持ちがありました。でも、復帰後はすぐに一軍に呼んでもらえたので、監督に感謝しています。周りでそのような環境をつくってくれた方にも感謝しています。今年はそれに報いるためにも、違った意味で責任感を持ってプレーしています。

──責任感とは具体的に?

西川 秋のキャンプ、春のキャンプでずっとセカンドを守らせてもらい、白井(一幸)コーチと二人三脚でやらせてもらっています。僕の中でつかんだものもありますし、監督に使ってもらっているので、周りの人に迷惑をかけられない。セカンドで責任感を持ってやっていきたいなと思います。去年は普通のゴロをアウトにできないことが多々あったので、それを今年はなくしたいです。

───首脳陣からセカンド一本で行くぞ、と言われたのですか。

西川 いえ、言われてないんです。でも、秋のキャンプはずっとセカンドだけの練習でした。春のキャンプでは、外野手用のグラブを用意しようかと迷いました。でも、セカンドで試合に出られなければ、自分は使い物にならないという覚悟で練習しました。

▲プレーもさることながら端正なルックスでファンからの支持も多い



──キャンプで一番時間を割いたのは守備の練習ですか。

西川 はい。守備がメーンでしたね。

──他球団の二塁手で、うまいな、と思う選手は誰ですか。

西川 楽天の藤田(一也)さんです。

──どこがすごい?

西川 ミスがないのはもちろんですが、難しいプレーを難しくないようにする点です。捕ってからの速さもそうです。楽天の球場のコボスタ宮城は12球団で一番守るのが難しい。人工芝でも、長い間使っているのでボコボコで、よく跳ねるんです。その中であれだけのプレーを続けるのは大変なことだと思います。試合などで会ったときは、いろいろ聞いたりもします。

──どんなことを聞くのですか。

西川 コボスタでどのように守ったらいいのか聞きました。敵ではありますけど、アドバイスをもらえたらなと思いました。

──守備のときにこだわっている点は何ですか。

西川 広い範囲を守りたいです。普通のゴロをアウトにするのもそうですが、ピッチャーがヒットかなと思う当たりをアウトにできれば、一気に流れが変わることもあります。広範囲をカバーすることでピッチャーを助けたいです。

──守備位置も頻繁に変える?

西川 そうですね。大引(啓次)さんに相談することもありますが、バッターを見たり、キャッチャーのサインなど見て動いています。

──こっちに来そうだなという第六感のような感覚はありますか。

西川 今年になってよく感じるようになりました。バッターがこっちを狙っているなとか、ピッチャーがこういう球を投げるから、ここに来るかなと予測します。打者の動作、キャッチャーのサインを見て感じるし、常に探しています。

打席でも塁上でも相手に考えさせたい

──その中で開幕戦(3月28日・巨人戦、東京ドーム)は7回の守備からマスクをかぶりました。

西川 あれだけのお客さんの中でプレーしたことが初めてだったのですが、とにかく0点で抑えないといけないという思いだけで試合に出ました。

──打撃面で技術的に変えた部分、よくなった部分はありますか。

西川 今年はまったくいいところがなく、少し悩んでます。守備も打撃もいろいろ考え過ぎてしまって、少し苦しい状態ですね。

──現在の打撃の課題は何ですか。

西川 相手側から見たら、僕は塁に出したくない選手だと思うんです。ヒットでなくても四球などで、どれだけ塁に出られるかが大事だと思います。絶対にしていけないのが三振。三振だと、そのあと何も起こらないので。追い込まれたら四球を取るなど、もっと粘り強くやりたいです。

──二番という打順については?

西川 自分を殺さないといけないところもあり、難しいです。チームのことを考えないといけない。

──1番の陽(岱鋼)選手が出た直後に考えることは何でしょう。

西川 送る、走るのを待つなど、いろいろすることがありますね。ランナーが二塁なら、右に打って進める。当たり前ですが、二番はそういうことが多い打順だと思います。

▲前後を打つ陽とハイタッチ。足もあり、一発もある強力なコンビを形成する



──そこで生き残るために、自分が勝負をしていく武器は何ですか

西川 相手バッテリーや内野手に嫌われたいですね。「この打者だと少し前で守らないと内野安打になってしまう」などと、いろいろ考えてもらえるようになりたいです。塁に出てもそうです。

 セカンドに出塁したとき、外野がもっと前に出てこないとホームでアウトにできないなと意識させる。ランナーでも相手のポジションを動かしていけるようにしたいです。そうすればバッターは気持ちが楽になる。一塁にいれば、盗塁を警戒してストレートが多くなります。そういう部分で嫌がられたいですね。

──今は嫌がられる選手になり切れていないと?

西川 かなり楽な選手になってしまってますね。

──今年はサヨナラヒット(4月13日・西武戦=札幌ドーム)など、活躍も見られます。

西川 そういう場面で回してもらっています。僕が打てる状況を周りが作ってくれているおかげです。

──西川選手は足も大きな武器です。盗塁にこだわりはありますか。

西川 数もそうですが、質はもっと大事にしています。「ここで走ってほしい」というときに走れるのが、バッテリーにも嫌がられると思います。アウトになるのは絶対ダメだと思います。僕は二番であとに三、四、五番と続くので、チャンスが続くところをつぶしてしまうのは絶対にダメですね。

──昨季、陽選手が盗塁王(47盗塁)になりましたが、どう見ていましたか。

西川 あれだけのトライ数があるのがすごい。盗塁は一人でできるものではなく、周りの力も必要です。僕は二番で好き勝手には走れないので、三番の大谷(翔平)や四番の中田さんに苦労をかけないように狙いたいです。

──4月22日のソフトバンク戦(東京ドーム)、無死一、三塁で中田翔選手の中飛で三塁からタッチアップを狙いましたが、相手の好返球で刺されました。西川選手の足なら、勝負すべき場面だと思いますが、自分ではどのように考えていますか。

西川 反省しないといけないですけど、次にあの打球が飛んだとしてもスタートを切ります。ちょっと送球がそれれば1点ですからね。四番の打席なので得点を稼がないといけないですし。何とかアシストしていきたいです。アウトにはなったので、間違いじゃないという言い方はダメかもしれませんが、次にあの打球が飛んだら、僕はまた行くと思います。

▲4月22日のソフトバンク戦、無死一、三塁の場面に、浅い中飛で本塁突入も憤死。結果的にはトリプルプレーとなったが、積極的な走塁は大きな武器だ



──コンディション維持のために普段の私生活で気を付けていることはありますか。

西川 寝るのがすごい好きで、睡眠時間はしっかり確保しています。あと、すごく痩せやすいので食欲の落ちる夏場などに食事をしっかりとるように意識しています。

──昨年は負傷離脱中にどのようなトレーニングを行ったのですか。

西川 使えるところは全部鍛えてました。僕はバットを持たないで立った感覚など、イメージをすごく大事にしています。頭でしっかりイメージできれば、体を動かせるタイプなんです。悪いときはイメージが全然浮かばない。このピッチャーでこういう球が来たら、こう打てると頭の中に描いてます。状態が悪いときは相手は関係なく、鏡と戦うことがよくあります(笑)。イメージができるときは、状態がいいです。

──最近、そのイメージはできていますか。

西川 ぼちぼちですね……。一時はまったくイメージが沸かなくて。

──そういうときは結果も出ないものですか。

西川 全然出ないです。バットにも当たらないくらい。そういう波をなくさないといけないんです。いろいろ経験して悪いときなりのやり方を探しているところです。

──チームとしては昨年最下位で、今年は逆襲の年だと思います。ここまで雰囲気はどうですか。

西川 最後まであきらめずに戦えていると思います。なんとか最少失点で戦っていかないといけない。その中で去年になかった逆転勝ちが何度か見られます。それを増やすことも大事ですね。先制することに越したことはないですが、先に失点しても最後まであきらめずに戦うことが大事だと思います。

──手強い相手を倒していかなければなりません。

西川 相手のスキを突いて最少失点で守り抜いて勝つ。守り勝つ野球をやっていきたいです。

──守り勝つ野球には守備力は欠かせませんね。

西川 そうですね。ミスなんかしてたら話にならないです。

──今年の決意をお願いします。

西川 144試合ケガなく出続けたいと思います。その中でチームのプラスになっていきたいですね。

PROFILE
にしかわ・はるき●1992年4月16日生まれ。和歌山県出身。179cm75kg。右投左打。智弁和歌山高時代に4度甲子園出場。11年ドラフト2位で日本ハムに入団した。11年は主に二軍で過ごし、ファーム日本選手権で3安打を放ち、優秀選手賞を受賞。12年に一軍デビューを果たし、13年にレギュラー獲得も、ケガで長期離脱した。今季の成績は29試合に出場し打率.241、26安打4本塁打11打点10盗塁(5月2日現在)。
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