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ロイヤルズは青木選手との契約を延長するのか

 

15年はどこのユニフォームを着ているのか(写真=AP)



選手の引き止めも容易ではない台所事情


 2014年、青木宣親選手が所属し29年ぶりのワールドシリーズ制覇を目前にしながら、サンフランシスコ・ジャイアンツに負けてしまったカンザスシティ・ロイヤルズ。

 今回のコラムでは、カンザスシティ・ロイヤルズについてお伝えしたいと思います。カンザスシティ・ロイヤルズのファンは2015年に再びポストシーズンに進出し、ワールドシリーズ制覇を望んでいると思いますが、今オフの補強はとても重要になってまいります。

 カンザスシティ・ロイヤルズが本拠地とするカンザスシティは、人口が49万人余りのマーケット規模がとても小さく、またロイヤルズの予算には制約が多くあり、チームに必要な選手を引き止めることも容易ではないのです。

 2014年のロイヤルズの年俸総額は9,099万4,500ドルでMLB全体で18位の規模でしたが、この金額はロイヤルズの過去最高の年俸総額となり、この金額を数年は続けることが厳しいのではないかと思います。

 ロイヤルズの中で2015年の契約が確定している7人の年俸総額だけで4925万ドルとなり、ここに年俸調停権を持ち、年俸が上昇することが必至のプレーヤーの金額が加わります。

補強予算の確保は


 これらの年俸調停権を有する選手の想定される年俸を合計すると、およそ3000万ドル前後になることが予想され、先ほどの確定している年俸4925万ドルと合計すると、8000万ドルに到達することになります。

 地元のファンの方も「2015年の補強予算はないのではないか?」と思われるのですが、来季の年俸総額を増やすことができる可能性もないわけではありません。2014年は優勝争いで盛り上がったため、観客動員が2013年の175万0,754人から195万6,482と20万人超も増加しましたし、プレーオフ進出での収入増があったため、年俸総額を1億ドル程度までは増やせるのではないかと思っております。

 ただ、継続的な経営の健全性を考えると、オーナー側がそれを了承するかどうかは定かではありません。実際の補強に動かせる費用は、トレードなどで年俸が減らない限り、1000万ドルから2000万ドル程度となるため、大きな余裕はないのではないでしょうか。

FA選手の交渉も多額な予算が必要に


 2014年シーズンオフにFAとなったロイヤルズの選手は以下のとおりとなっています。

*ジェームズ・シールズ
*ビリー・バトラー
*青木宣親
*ジェイソン・フレイザー
*スコット・ダウンズ
*ルーク・ホッチェバー
*ジョシュ・ウィリンガム
*ラウル・イバネス

 ジェームズ・シールズはロイヤルズが引き止めの交渉を行う意向があるものの、レッドソックス、ヤンキース、カブスなど資金力があるチームが参戦し、年平均1800-2000万ドルは必要なため、実現性は低いのではないでしょうか。

青木選手の契約は


 青木宣親選手に関しても、デイトン・ムーアGMは再契約の希望を示しておりますが、予算上の制約がある上に、先にあげたように優先すべき補強ポイントは先発投手や指名打者にありますので、青木選手の契約は補強ポイントを終えてからになるのではないでしょうか。

 またその時の補強次第では、2015年に青木選手がロイヤルズのユニフォームを着ているかどうかは微妙です。

 ロイヤルズは年俸総額に制限があるチームのため、FA市場で大きく動くというよりも、トレードをフルに活用する方法を選択する可能性が高いのではないでしょうか。

 トレード候補として名前があげられているのは以下の選手です。

*グレッグ・ホランド
*アレックス・ゴードン
*エリック・ホズマー
*マイク・ムスタカス

 上記をみて分かるようにワールドシリーズ進出を支えたチームの中心選手の名前が、このオフにトレードに出されることになるのではないかと予想します。

 エリック・ホズマーとマイク・ムスタカスは年俸調停権1年目で、FAとなるのも2017年シーズン終了後と、まだ3年の余裕があるため、実現する可能性は低そうです。

 アレックス・ゴードンは31歳となり2015年の契約までは確定しているものの、2016年は1250万ドルのプレーヤーオプションで、チームが確実にコントロールできるのは2015年シーズンまでと予想されます。

先発投手の補強は必要不可欠


 ジェームズ・シールズがFAとなることで、ロイヤルズはチームの大黒柱を失うことになりますので、先発ローテの再編が重要な課題です。

 本来であれば2012年のドラフト1巡目全体5番目で指名され、トッププロスペクトとして評価されているカイル・ジマーに期待がかかるところですが、MLB昇格が期待された2014年シーズンは故障に悩まされ続け、マイナーでもわずかに4回2/3しか投げることができませんでした。さらに、残念だったのは参加していたアリゾナ秋季リーグで再発してしまい、結局肩の手術を行う事となり来季の開幕には間に合わないと思います。

 そのため、2015年に再びポストシーズンを狙うのであれば、FA市場かトレードで先発投手の獲得を考えていると思います。FA市場での獲得候補としては、2013年に在籍していたアービン・サンタナではないでしょうか。ロイヤルズでの実績もあり、年俸もハイエンドのFA投手よりはリーズナブルなため、
有力な候補ではないでしょうか。

 どちらにしても、FAか、トレードでの先発投手の補強を行わないと来季は厳しい戦いになるのではないでしょうか。またロイヤルズは予算に制限のあるチームのため、デイトン・ムーアGMが今オフ、どのような補強をするか楽しみにしております。
著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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