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岡田彰布コラム

勝って当たり前……は苦しいものよ。それをノビノビ戦わせ、チームのらしさを存分に発揮させた工藤采配はお見事!!

 

短期決戦は勢いが重要。ロッテとの戦いで身に染みたわ


 今週号は日本シリーズ!分かっている、分かっていますよ。でもね、勝敗の行方が分からないと、さすがにオレも書けないわ。そう編集担当者に伝えると、ギリギリまで待ちますから……と、厳しい締め切りを設定された。もしシリーズが福岡に戻れば、実に中途半端な原稿になる。そんなリスクを抱えながらの締め切りだ。

 しかし、何とか間に合った。神宮での第5戦。ソフトバンクがまざまざと力の差を見せつけて2年連続の日本一に輝いた。オレの原稿もギリギリまで粘った結果、完結編として書ける。ということで、29日の試合後、オレは一気にパソコンに向かって、指を動かしているのである。

 まず今シリーズを語る前に、日本シリーズについて、思い出を書いてみる。オレはこれまでの野球人生で3度、日本シリーズに挑んでいる。それもすべて立場を変えての挑戦だった。1985年、オレは選手会長として西武とのシリーズに出た。このシーズン、阪神は熱狂的な声援に支えられて、21年ぶりのリーグ優勝を飾り、日本シリーズもその勢いのまま4勝2敗で日本一になることができた。

 2度目は2003年。監督は星野(仙一)さんで、オレはコーチ。三塁ベースに立ち、ソフトバンクとの戦い。最初の敵地での2試合は負け、甲子園に舞台を移したあとは3連勝。それも劇的な勝ち方で、王手をかけた。ところが再び福岡に戻ったら、勢いはソフトバンクの方が上回っての連敗……。敵地で4敗、本拠地で3勝。「内弁慶シリーズ」と評された極端なシリーズになった。

 そして05年は監督としてのシリーズだった。当時はクライマックスシリーズが導入されておらず、リーグ優勝を果たしたセとパのプレーオフの勝者の激突。相手はロッテやった。オレはホンマ、自信満々やったよ。パ・リーグのどこのチームが相手でも負ける気がせんかったんよな。それほど阪神は強い……と思っていたし、実際、すごい充実ぶりやったんよ。ところが勝負事は分からんものよ。千葉で始まったシリーズで、ロッテのすさまじい勢いに飲み込まれてしまったわけや。初戦、とにかくロッテの若いバッターが思い切り振ってくる。この思い切りのよさを食い止めることができない。防戦一方よ。挙げ句に何が起きたかというと、大差で負けている終盤、濃い霧が立ちこめ、このため7回裏一死ゲームセットや。すべてに見放されたようやったわ。

 千葉で連敗して、切り替えて臨んだ甲子園でも流れを変えることはできずに連敗……。まさかの4連敗よ。今江(敏晃)、西岡(剛)、サブロー、福浦(和也)といった若い選手に、無茶苦茶打たれたわ。ホンマ、悔しさだけしかないシリーズになったけど、あらためて短期決戦は「勢い」が重要や……ということを認識させられたもんよ。

ソフトバンクは打線がすごいがディフェンス力に注目したわ


日本一のチームを新監督として引き受け、ノビノビ戦わせて2連覇した工藤監督はお見事な采配だったわ



 そういう観点で、今年の日本シリーズを見てきた・・・

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岡田彰布のそらそうよ

岡田彰布のそらそうよ

選手・監督してプロ野球で大きな輝きを放った岡田彰布の連載コラム。岡田節がプロ野球界に炸裂。

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