3勝9敗、防御率4.54(8月7日現在)。この数字だけを見れば、決して満足できるものではない。だがプロ13年目を迎えた
新垣渚にとって、今季は久々に一軍の舞台で戦えている充実感がある。
「勝ち星はいいピッチングをしてもつかないことがある。でも一軍で戦えるチャンスを逃すわけにはいかない。まだまだこれからアピールしたい」。35歳になった今も、ハートは甲子園を沸かせた高校時代と同じく燃えている。
新垣が注目を浴びるようになったのは沖縄水産時代。3年時に甲子園に春夏連続出場したが、ともに初戦敗退。だが夏には当時の大会最速となる最速151キロをマーク。横浜の
松坂大輔と並ぶ剛腕投手として大きく期待された。
高校卒業後は九州共立大を経て、03年にドラフト自由枠でダイエー(現
ソフトバンク)に入団。04年から3年連続で2ケタ勝利をマークしたが、以降は肩や腰の故障などで低迷。昨年7月にトレードで
ヤクルトに加入した。
だがこの移籍が大きなターニングポイントになった。「環境を変えることが人を変えるには大事だと思った」。移籍2年目となった今季は、4月9日の
中日戦(神宮)で初登板初勝利を挙げると、先発ローテーションの一角として機能。140キロ台後半の威力ある直球と縦に大きく変化するスライダーを取り戻し、完全復活を遂げた。真中監督も「しっかり試合を作ってくれている」と信頼を寄せる。
後半戦は1学年上の石川、同級生で右ヒジじん帯再建手術から復活した館山が投手陣を支える。「負けられないと思うし、いい刺激の中で投げさせてもらっている」。松坂世代を代表する剛腕が、14年ぶりのリーグVへ導く。