デーゲームで試合があれば、試合の後に夕飯までの間に柳田の豪快なスイングをマネて遊ぶ子どももさらに増えるかもしれない
息子を保育園に送りにいったとき、野球大好きのお友だちが「昨日、筒香(嘉智)がホームランを打って
DeNAが勝ったよ。日本シリーズに行くんだよ!」と笑顔で教えてくれた。CSファイナルステージ第5戦。
広島との試合の内容をうれしそうに話してくれた。
「遅くまで起きて見ていたんだね?」と聞くと「朝のテレビで見た」と寂しそうな表情を浮かべた。その瞬間、母親が「寝ないといけない時間だったからね」と。続けて「この子、テレビに怒ってたんですよ、試合が全部見られないって」。
朝のニュースのハイライトだけで、これだけうれしそうな顔をする野球好きの子ども。実際にライブで見られたらどれだけ喜んだのだろう。今年の日本シリーズも第7戦の18時15分スタート予定以外はすべて18時30分スタート。試合は3時間半くらいかかるので、試合終了は10時を過ぎる。多くの子どもたちが、試合を最後まで見ることなく、寝床に入らないといけない。
1980年代などは、日本シリーズはデーゲームで行われていた。小学生のときは、平日は学校から急いで帰ってテレビの前に座って見ていた。土日も昼に最後まで試合にかじりついていた。さまざまな名シーンをライブで見られて興奮した記憶があるし、今でもその興奮した記憶は鮮明に覚えている。その思い出はニュースのハイライトと比較してもまったく違うだろう。こういう子どもたちの中から将来のプロ野球選手が生まれ、新しい歴史を作っていくのだと思う。
プロ野球人気の低迷が叫ばれる中、元プロ野球選手による野球教室など、子どもたちが野球に携われる機会を増やそうと球界全体が努力している。それでも一番の特効薬は、日本シリーズやCSなどのプロ同士の真剣勝負から生まれる、三振やホームラン、ファインプレーではないだろうか。
さまざまな理由ですべての試合がナイトゲームのしかも、シーズンより遅いスタートになっていることも分からないでもないが、せめて土曜、日曜はデーゲームでもいいのではないか。それが厳しいのならせめて15時くらいからのスタートで、子どもたちが試合を最後まで見られる状況を作ってあげるべきだし、それこそが野球人気の拡大につながる。同時に、試合後に父親と風呂に入りながら「柳田(悠岐)のスイングすごかったね!」「筒香のホームラン、大きかったね」と忙しいパパと野球をつうじてのコミュニケーションツールにもなると思うのだが。
文=椎屋博幸 写真=高原由佳