読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者は現役時代にゴールデン・グラブ賞を3回獲得した、元ソフトバンクの柴原洋氏だ。 Q.プロ野球の合同自主トレーニングやキャンプの序盤戦を見ていると、外野手も内野手のノック(複数個所にノッカー)に入っているのを見かけます。どのような意味があるのでしょうか。また、プロ野球では普段から外野手が内野のノックを受けることはあるのでしょうか。(山梨・35歳)
A.大きな動きに慣れてしまった体の調整ができます。クセがついてしまったスローイングの調整にも。
元ソフトバンク・柴原洋氏
特にキャンプの第1クールで取り入れられることが多いメニューですね。内野の4カ所ないし3カ所に分かれて行うメニューで、キャンプイン直前の合同自主トレでは、これに外野ノックが加わって、内野手もフライを追うこともあります(キャンプでも内野手が外野ノックを受けることもありますね)。
おそらく、どこの球団も取り入れているのではないかと思います。周りから見ると外野手が内野のノックを受けて、お遊びのようにも感じられるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
キャンプで行うこのようなノックの最大の目的は大きな動きだけではなく、細かい動きを再確認するためのものです。外野手はどうしても左右のフライやゴロを追いかけるような大きな動きがメーンになってきてしまいます。内野のノックを受けることで、細かいステップワーク、グラブさばきを行うことは、その後、外野に戻っても、瞬時の対応が求められたときに生きてくるのだと私は考えながら、私は現役時代はこの練習に取り組んできました(例えば、前にダッシュしてゴロをさばくときは、内野の動きが必要になります)。一方で、内野手が外野ノックを受ける場合は、大きな動きを確認しているわけです。
キャンプ期間で体を起こすという意味合いもここにはあるのは確かです。とはいえ、私の現役時代もそうでしたが、現代の選手たちは自主トレをみっちりしてきていて、キャンプの段階では体を作り上げてきていますからね。技術的な部分でのスタート、と考えてもらっていいと思います。
もちろん、開幕後、ペナントレース中も細かいステップを練習に取り入れたいな、と思ったときは、内野の守備コーチにお願いして打撃練習中の守備に就かせてもらい、ノックを打ってもらうこともあります。特に意識して細かくステップをし、大きな動きに慣れてしまった自分の体の調整をしていました。
また、内野のノックを受ける場合、しっかりステップを踏んで一塁に投げることも意識して行っていました。スローイングのフォーム固めですね。外野のスローイングだと、どうしてもダッシュしたその勢いのまま投げるクセがついてしまい、ボール自体にロスが生じることが出てきます。外野手の“調整”に、内野ノックはもってこいということですね。
●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。
写真=BBM