激しく燃えるファイティングスピリットから「闘将」の異名を取る星野監督だが、その選手操縦術には“言葉の力”が大きく影響している。球団初のリーグ優勝へ果たした楽天監督3年目の今季、そして阪神監督として低迷を打破した2003年を振り返る。 写真=桜井ひとし、林伸吉郎、BBM 若き犬鷲たちを率いる大胆さと繊細さ
口を酸っぱくして言ってきた言葉。その一つひとつを理解した選手たちが、結果を生み出している。球団初の優勝を飾った楽天。それを率いる
星野仙一監督が、指揮3年間で語ってきた言葉を振り返る。
「君たちをゼロから見る」
就任後初の久米島キャンプ。キャンプイン前日に、選手へ向けて語った一言だ。実績にこだわらず、公平な視点から戦力を見た。結果、芽を出した選手がいる。それが星野チルドレン。
大胆さ。星野采配を表す最適の言葉だ。「良ければどんどん使う」と、若手であろうと積極的に起用した。野手では
銀次、
枡田慎太郎が代表格。2012年は、ともに守備に難があった銀次、枡田を二遊間で使った。その辛抱強さで、銀次は今、打率でリーグの上位につけ、枡田も長距離砲として才能を開花させている。
投手では
釜田佳直、
則本昂大、
宮川将。釜田は新人の12年に5月から先発ローテーションに抜てき。完投、完封を含む、7勝を挙げた。則本は今年の開幕投手に指名。育成選手として、今年入団した宮川は6月に支配下登録されると、すぐに一軍に呼び、8月には初勝利も経験させた。「このチームには競争がない。選手はいつも同じ。それでは、強くならない」
相手と戦う前に、チーム内の競争を激化させた。典型的な例が外野手陣。09年首位打者の鉄平、俊足好打の
聖澤諒に、強肩の
牧田明久。就任直後「最強の外野手陣」と語っていた3人は、気づけば全員が定位置を脅かされた。今夏の好調を支えたトリオは、左翼・枡田、中堅・
島内宏明、右翼・
岡島豪郎。昨年、新人ながら
嶋基宏とポジションを争った捕手の岡島と、内野手の枡田を外野へコンバートし、2年目の島内は実力でレギュラーをつかんだ。
指揮官は「ようやく競争ができるようになった」と、手応えを口にした。本職ではないことでのリスクについても「オレは全然怖くない」と言い切る。
「ウチはプロセスのチーム。結果オーライではダメ」
就任当初から昨年まで、幾度となく口にしたセリフ。勝っても不満や課題があれば、試合後は厳しい表情を見せることも多々あった。チームに緊張感を生むため、あくまで内容にこだわる。勝利したのに鬼の形相。その光景に、最初は戸惑う選手も多かったが、内容が伴い、結果が出始めた今季、そのコメントは変わってきた。
「選手はよくやっている」。今季、首位を快走するチームの成長について聞かれた指揮官は、しばし悩んだ後こう答えた。「負けてる試合でも、9回とか、簡単に終わらなくなった。何とかしてやろうと。俺は負けても『クローザーを出させろ!』と言ってきた」。最後まであきらめない執念。それを、ナインから感じ取れるようになったという。
監督相手にひるんでいた選手との距離も、日を重ねるごとに縮まった・・・
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