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2014ドラフト特集第3弾

アマチュア指導革命/ベテラン指導者・江藤省三氏も「資格回復」

 

プロ・アマ断絶から約半世紀、歴史的雪解け――。「学生野球資格回復研修会」が昨年12月に開催された。
今回の条件緩和により、プロ側1日、アマ側2日の研修を受ければ回復できることになった。
この研修会には2010年春から慶大の監督を務めたベテラン指導者、江藤省三氏の姿もあった。高校の指導を目指すためだ。
この改革により、アマチュア指導現場はどう変わっていくのだろう。その未来を展望する。


元プロの人間がアマから学ぶ姿勢

 プロ側の研修(4時間)を経て迎えた、アマ側の研修(2日・14時間)。昨年12月13、14日にこれが終了すると、東京で受講した125人に修了証が交付された。

 研修会では2日間で10講座が開かれた。学生野球憲章の基本原則に始まり、体罰問題や特待生制度など、これまで起こってきたあらゆるケースを挙げながら講義は進められた。2日目には法大・山中正竹特任教授(元横浜専務)、日体大・河野徳良准教授(同野球部長、全日本野球協会医科学部会員)、アマチュア野球規則委員・吉川芳登氏が交代で教壇に立ち、それぞれのテーマを受講者の前で語った。「大学(慶大)では(4年間)指導してきたが、高校でもやってみたい思いはある。今度は学校が自分たちを選ぶことになる」

 修了証を手にした江藤氏は穏やかな表情でこう語った。1961年の柳川事件をきっかけにプロ・アマの関係は悪化。それから53年後に歴史的雪解けを迎えたのだった。11年の大学選手権準決勝で江藤監督との“元プロ対決”で話題となった元広島古葉竹識・東京国際大監督も「断絶したのがプロ4年目。ようやく、そういう時代になった。うれしい」と語っている。

 そして年明けの1月20日、日本学生野球協会が資格審査委員会を開いて最終手続きとなる適性審査を行い、元プロ208人の資格回復を認定した。そこには八木沢荘六氏、藤田平氏、大矢明彦氏、石毛宏典氏、小宮山悟氏らの名前が掲載された。

 西武の黄金時代に活躍し、現役引退後はオリックスの監督も務めた石毛氏は「高校生を指導できるというのは、われわれプロ野球OBにとって積年の夢だった。プロ野球選手会の果たした役割も大きい」と感謝の意を表した。

「今後はどのレベルでもお話があれば前向きに考えたい。先生方が口々にしていたように、期待に添える指導をしていかないといけない」。かつては四国アイランドリーグ設立に尽力し、野球界の底辺拡大に貢献した石毛氏は、さらにその範囲を広めようとしている。

 主将も務めた早大を卒業した後は日本生命を経て巨人入りした仁志敏久氏は「学生に関しては、教育的な側面を考えていく必要がある。プラス、プロの技術。指導者として洗練されていないといけない」と気を引き締めていた。

 通算101勝を挙げた野村弘樹氏は「長い歴史から見て、門戸が開けた一歩」と感慨深げに語った。それでも、不祥事から監督不在の母校・PL学園高の監督就任は現段階で否定。「プロの人間がアマチュア指導者から学ぶことは多い」と謙虚な姿勢を崩すことはなかった。その点で、高校の指導者を目指す元プロ指導者のスタンスは一致している。

 なお、すでに適性審査を経た元プロの大学監督(元中日の中大・秋田秀幸監督ら)、また、昨年から東大を指導する桑田真澄氏のような「大学特別コーチ」の立場の場合、14年までの前規約が反映されるため、今回新設された学生野球資格研修を受講する必要がある。受講しなければ、15年からは指導できない。

▲昨年12月に行われた学生野球資格回復研修会。125人の元プロが受講した



晴れて資格回復
だが、その矢先に…


 これまでの制度では元プロが高校の現場に立つには教職課程を取得し、2年間教壇に立った上で、同協会の資格審査を受けなければならなかった(大学はプロ退団後、2年経過が条件)。それが昨年施行された新制度では、冒頭の講習を受ければ、資格回復の条件をクリアできる。

「これまでもさまざまな形で復帰されてきましたが、今回は・・・

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