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オープン戦の結果は12球団中11位という状況で、開幕前は首位争いを繰り広げると思っていた阪神ファンの方が少なかったのではないか。しかし、そのタイガースを統括する指揮官・和田豊は確固たる決意を持ってシーズンに臨んでいた。その覚悟が今、チームを首位争いへといざなっている
写真=毛受亮介

座右の銘を実行へ

 勝負どころを意識するように、しみじみと口を開いた。和田豊監督は交流戦でのパ・リーグとの戦いを前に、胸に秘めた思いを吐き出した。

「毎年、交流戦はいいスタートが切れていないんだよな。今年は何とか最初からいい形で勝っていきたい。パ・リーグのチームは早いイニングから一気に仕掛けてくるけど、今年はこっちも何とか勝負をかけないとな」

 2012年に5連敗、昨年は3連敗で始まった交流戦での戦いに闘志を燃やした。ペナントの区切りと言えるセ・リーグとの44試合を終え、貯金6の2位。首位・広島を3ゲーム差と追っているだけに、指揮官の眼光も鋭い。だが、開幕を目前に控えていた約2カ月前。首位争いを繰り広げる猛虎の姿はまったく想像できなかった。

「開幕まで2週間と差し迫っておるわけですが、非常に危機感を持っております。心配を募らせております。オープン戦といえば勝敗を度外視し、個人の調整ということは十分に理解していますが、各チームに比べて調整が遅れているのではないか」

 坂井信也オーナーが現場に苦言を呈したのは3月12日に大阪市内で行われた阪神電鉄本社主催の激励会だった。昨季リーグ2位のチームが、オープン戦で7連敗を喫するなど、通算でも3勝10敗3分の12球団中11位に沈んだ。鳥谷、西岡、ゴメスら主力の故障が相次ぎ、開幕前までベストオーダーが組めない。だが、グループ総帥に続いて壇上に立った和田監督は反省を口にしながらも、毅然(きぜん)とした態度でマイクを握った。

「大変ご心配をおかけしておりますが、チームはキャンプ時からの構想に基づき、着々と前に進んでおります。3月28日の東京ドームに最高の状態で乗り込むべく、この2週間を調整していきたい」



 泰然自若――。自らの座右の銘を行動で示すように、我慢の境地が指揮官の言葉にあふれていた。

粘り強く戦う誓い

 今季の和田阪神のストロングポイントは、12球団屈指の得点力を誇る攻撃陣だ。中でも、四番に座るゴメスは4月に月間29打点をたたき出すなど、猛虎打線をけん引している。ただ、夫人の出産でキャンプインに遅れ、発熱や右ヒザ裏痛で3月中旬までは実戦の舞台すら踏めなかった。

「確かに開幕に無理矢理間に合わせた感じはあったかもしれない。でも・・・

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