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今季のパ・リーグで目立つのがオリックスが頑張りだ。4月に月間18勝の球団記録を打ち立て、5月16日からのソフトバンクとの首位攻防戦を制し首位に返り咲いた。今季の強さの秘密はいったいどこにあるのか、今回は選手のコメントを交えつつ分析してみた。1996年以来のV奪回に向け、走りに走るオリックスから目が離せない。
文=喜瀬雅則(産経新聞) 写真=BBM

はっきりとした役割分担

 開幕前の“低い下馬評”を完全に覆し、オリックスが鮮やかな『開幕ダッシュ』を決めた。まずは、快進撃を物語る数字を列挙してみよう。

4月月間18勝(球団新)
パ20勝一番乗り(25年ぶり)
貯金11到達(17年ぶり)
平野佳寿4月月間11S(パ・タイ)
佐藤達也4月11H(球団新)
西勇輝、ペーニャ4月月間MVP(投打ダブル受賞は球団9度目)

 長いペナントレースの、およそ4分の1を終えた。マラソンでいえば序盤10キロ、競馬なら第1コーナーを過ぎたあたりだろう。まだまだ序盤、真の勝負はこれからだが、開幕42試合終了時、5月21日現在で、2位のソフトバンクと0.5ゲーム差の首位。3位の日本ハムには5.5ゲーム差をつけており『2強』と表現できる位置につけている。

 その強さの秘密は、どこにあるのか。戦う選手たちが、どんな手応えをつかんでいるのか。昨季まで5年連続Bクラスのチームが、今まさに遂げつつあるその変貌ぶりを、選手たちの証言で綴つづってみる。

「流れ……ってのは、見えないものなんですけど、確かに今、感じますよね。僕にとっては、正直言って初体験です。これからどうなるか分かりませんけど、チーム全体で自信がついてきていますし、その自信をって、試合に臨めているのが大きいことですよね」

 そう語るのは、プロ7年目の25歳、捕手の伊藤光だ。近鉄と合併した2005年以降、Aクラスは1度だけという球団だけに、生え抜きの若き捕手にとっては、快進撃の実感すら未体験。そんな中で、伊藤がつかみ始めているのが自分の役割。

「何をすべきなのか、この状況で何をしてはいけないのか、分かってきたというのがありますね」

 伊藤の場合、打順はもっぱら「九番」。「とにかく、四球でも何でも出塁すれば、上位打線に回る。それがうまくいかない場合でも、球数を相手投手に投げさせて、ダメージを与える。それが下位打線の役割」

 伊藤が挙げたあるシチュエーションは「一死満塁」で迎えた自分の打席。「このとき、一番いけないのは投手ゴロでのゲッツーですよね。それを避けるためには、どうすればいいか。それを考えると、打つべきコース、球種、高さ。そういうのが見えてくるじゃないですか。そういうことが、全員でできていますよね」

 こうした“ケーススタディー”をミーティングや、さらには森脇浩司監督との、グラウンド上や練習中の1対1でのコミュニケーションを通してたたき込まれているのだという。だからこそ、各人の役割が「はっきりと見えてくるんです」と4年目の21歳の外野手、駿太も証言する。

 駿太の場合、スタメン出場は今季まだ8試合(5月18日現在)。チームトップ級の強肩と守備力を生かし、もっぱら勝ちゲームでの守備固めという途中出場のケースが多い。「勝っているときの守備。僕はそういうのが多い。それが分かっているから、準備がしやすいんです」

 試合の流れを踏まえ、試合中盤になると、駿太はベンチ裏でストレッチを始める。打順の絡み、点差。あらゆる状況をにらみ、心と体を高めていき、いつ声がかかってもいいように、スタンバイするという。「勝っているからこそ、一人ひとりがそうやって、できている役割というのが絶対にありますよね。だから、いい準備ができるんです」と語る。
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