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2014タイトルウォーズ

楽天・則本昂大が2年目のジンクスを克服した方法

 

パNo.1エースに挑む若き剛球右腕




 お立ち台で堂々と胸を張った。「こういう結果なので、さすがに今日はほめてもらいたいなと思います」と前日に退任を発表した星野仙一監督に言葉を向けた。9月19日の日本ハム戦(コボスタ宮城)。6回先頭の谷口雄也に左翼線二塁打を浴びるまで完全投球。終わってみれば、3安打で1対0完封。シーズン7完封は田中将大(現ヤンキース)を超える球団記録。球界を見渡しても、89年の斎藤雅樹(巨人)以来、25年ぶりの記録で13勝目を飾った。

 試合後、星野監督は「これが本当のエースというピッチング」と称賛した。則本の成長が凝縮されていた。史上6人目となる全員奪三振で、自己最多の13K。昨季は1度しかなかった2ケタ奪三振は2試合連続の今季6度目。田中将大、岩隈久志に続く球団3人目の最多勝、過去に田中しかいない最多奪三振という2つのタイトルを視界にとらえている。

 途中、苦しい時期もあった。7月に突然勝てなくなった。6月29日に9勝目を挙げて以降、5度の先発でいずれも4失点以上。2度の中継ぎ登板を挟んで2年連続2ケタ勝利の大台にたどり着いた。苦しい時期を乗り越えた。

「技術的なことよりも気持ちの切り替えができたのが良かった」。後半戦になってからは追い込んでからのフォークを狙い打たれるようになった。相手に研究されることによって2年目のジンクスに陥る選手は数多くいた。則本はそれを逆手に取った。「前半戦は奪三振のほとんどがフォークだった」。正捕手の嶋基宏と話し合い、その決め球を相手に意識させつつ、配球をガラッと変えた。フォーク以外にも直球、スライダーなどすべての球種で三振を奪えるようになったことが大きい。

 さらにもう1つ今シーズンから変わったものがある。試合に対する考え方だ。完投数は2位の4試合(オリックス金子千尋西武岸孝之)を大きく上回る9試合だ。昨季の完投は3試合だが、すべて「負け完投」だった。完投勝利のカベはいきなり開幕戦で乗り越えた。2年連続の開幕投手を任され、西武打線を6安打1失点に抑え、プロ初の完投勝利。常に全力投球を心がけながらも試合全体を見渡せるようになったという。

「9回まで投げるというプランを作れるようになった。いい意味で抜く場所が分かってきた」

 みなぎる自信が成長を加速させた。

 星野監督は「田中(将大)が、あれだけ勝てたのは探求心があったから。則本にもその探求心がある」と明かす。エースに必要な条件は備えている。「監督からは『3年やってこそエース』と言われてきた。真摯に受け止めています」。真のエースと呼ばれるため、進化を続ける若き右腕。その日々の積み重ねの先に自身初の最多勝の称号も待っている。

則本のライバルたち


 最多勝争いはパ・リーグNo.1右腕との一騎打ちになりそうだ。9月21日現在で則本が13勝、リーグトップを走るのが14勝の金子千尋(オリックス)。お互い残り試合数から考えても先発するチャンスは2試合、もしくは3試合。「15勝」がタイトル獲得の1つの目安になりそうだが、最後の最後まで予断を許さない。2人の背中を12勝の西勇輝(オリックス)、岸孝之(西武)らも追うが、タイトル獲得までは現状では難しそうだ。

セ・リーグの最多勝争い


 セ・リーグの争いは群雄割拠の様相を呈してきた。現在トップを走るのはメッセンジャー(阪神)の13勝で、12勝で久保康友(DeNA)が追う。3位以下は11勝で前田健太(広島)、菅野智之(巨人)、井納翔一(DeNA)、山井大介(中日)。この部門の大本命と見られていた前田健の勝ち星が伸び悩んでいるだけに、メッセンジャーはもちろん、試合数がリーグで一番多い14試合を残しているDeNAの2人にもタイトル獲得のチャンスはある。
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