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プロ野球新時代のリーダー学

糸井嘉男インタビュー「口下手な主将だけど先頭に立って頑張ります」

 


「言っていいんかな、これ。来年はキャプテンをすることになりました」2014年12月15日の契約更改時の衝撃のフライング発言から1カ月半が経過。1996年以来のリーグ優勝を目指すべく、オリックスの2015年シーズンがスタートした。その中心にいるのは、今季からキャプテンを務めることになった糸井嘉男。“宇宙人”とも呼ばれる男がどのようにチームをけん引して行くのか、ワクワクが止まらない。
取材・構成=三橋祐子 写真=佐藤真一

新主将は宇宙人!?


 日本を代表する外野手として、攻守にわたり高いパフォーマンスを披露しながらも、そのユニークな発言が話題を呼び、同僚からは“宇宙人”と呼ばれる糸井嘉男。そんな愛され男が今季から人生で初めてとなるキャプテンを務めることになった。1996年以来の優勝を目指すオリックスというチームの中で、どのようにナインをけん引していくのか。

──森脇浩司監督から直々にキャプテン就任の件を告げられたそうですが、どういった流れで?

糸井 昨年11月の球団納会の席で、「来年はお前にキャプテンを任せるぞ」って言われました。監督から直接言われたことで、すぐに「やったろ!」という気持ちになれましたね。僕は口下手ですけど、先頭に立って頑張っていきたいと思います。

──今回のキャプテン就任というのは、想定していましたか。

糸井 まったくしていなかったので最初は驚きました。でも、プレースタイルを変えるわけではないですし、年齢的にも、そういうところにいると思うので、選んでいただいてすごく光栄です。

──今季はチームとしてどのように戦っていきたいですか。

糸井 勝った負けたで気持ちが左右されることなく、常に熱い気持ちを持ってみんなで一丸となってやっていきたいですね。

──報道陣の問いかけに「この広い背中で引っ張ります」とおっしゃっていましたが、糸井選手は言葉よりも背中で引っ張るタイプ?

糸井 うーん。たまに言葉で(笑)。でも、いろいろとみんなに助けてもらわないといけない部分も出てくると思うんです。そこらへんは、グッチ(坂口智隆、前主将)や、恵一さん(平野)、光(伊藤、選手会長)もそうですし、小谷野さん(栄一)、中島(裕之)とか、みんなに協力を仰いでいきたいですね。僕一人が引っ張るというわけでなく、僕の中では全員がキャプテンです(笑)。

人生初主将も気負いはない。「全員がキャプテン」と、同世代の主力選手たちに協力を仰ぎながら、チームを作っていく



──いま、小谷野選手、中島選手という名前が出ましたが、新たに加入した選手と今いる選手たちとの橋渡し的な役回りも求められますね。

糸井 いや、そんなことないですよ。同じユニフォームを着たら、前にどのチームにいようとも、みんな仲間です。実績もある方たちなので、僕が橋渡しをするというよりは、どんどん意見をいただきたいですね。

──就任にあたり、糸井さんの中でキャプテンの理想像はありますか。

糸井 前チーム(日本ハム)の話になるんですが、やっぱり稲葉さん(篤紀)。近くで見ていて、選手としてすごく影響を受けました。理想像と聞かれて出てくるのは、稲葉さんしかいませんね。

──キャプテン稲葉のすごさとは?

糸井 熱い気持ちを持たせてくれる方でしたし、下の選手たちにもやりやすい環境を作ってくださいました。キャンプのときは最後まで一人で残ってロングティーをされたり、野球に取り組む姿勢も影響を受けたことが多いです。

──今回のキャンプでも、連日特打をされたり、熱心に練習に打ち込んでいらっしゃいますね。

糸井 やらなあかんと思ってます。かっこつけて言うけど、当たり前のことやから。常に成長したいと思っているんで。

今季もトリプルスリーを個人目標に掲げる糸井。飛距離アップのためキャンプでは連日バッティング練習に時間を割いている



──今年で34歳。その向上心は20代のころと変わりませんか。

糸井 僕は50歳まで成長したい!

──50歳!?

糸井 プロ野球選手は1年でも長く続けたいですね。

守備練習、打撃練習のあとはトレーニングに精を出す。ローマは1日にして成らず。日々の積み重ねが糸井嘉男を作っている



ファンとともに


昨季、悔しい思いをしたのはファンも一緒。Bs spiritsの精神を大切に、ファンと一緒になってリーグ優勝を目指す



 昨季は評論家の低い下馬評を覆す見事な快進撃を見せたオリックス。しかし、シーズン最後の最後までソフトバンクと優勝を争いながら、あと一歩のところで勝ち切れなかった。今季はその雪辱を晴らすシーズンとなる。「10.2」決戦で流した悔し涙は、まだ忘れていない。選手、スタッフ、ファン、みんなの思いはただ一つ。首位奪取だ。

──昨年、オリックスは6年ぶりにAクラス入り(2位)を果たしましたが、糸井選手にとってどのようなシーズンでしたか。

糸井 僕にとっては移籍2年目のシーズンで、チームとしての動き方にも慣れて、このチームで勝ちたいなと、本気で戦った1年でしたね。このチームに来たとき、勝ちに飢えているな、というのはすごく感じましたが、昨年優勝争いができたことは大きな収穫です。ただ、正直2位という順位は悔しかったし、今振り返ってもやっぱり勝ちたかった。年々成長していると思いますし、今年は是が非でも勝ちたいですね。

──開幕前の右脇腹痛、シーズン終盤でのヒザ痛など、糸井選手にとってはケガと戦いながらのシーズンでした。無理を押してでも試合に出続けたのは、何が何でも優勝したいという気持ちの表れですか。

糸井 それもありましたけど、やっぱり試合に出たい気持ちの方が大きかったですね。チームが優勝したとしても、そこに自分がいなかったらね……。やっぱりその場にいたいじゃないですか。

──日本ハムでは何度も優勝を経験されていますが、オリックスというチームが優勝するために足りなかったものは何だと思いますか。

糸井 これ、ということは一概には言えません。パ・リーグはほんまに毎年、団子状態ですよね。どのチームも同じようなレベルだと思います。でも、昨年優勝できなかったことで、それぞれが1勝の重みというのを、分かったんじゃないですか。

──2015年、やはり目指すところは優勝でしょうか。

糸井 オフの動きを見ていたら言うまでもないですよね。スパースターが入ってきたので楽しみです。

──中島選手、小谷野選手とはコミュニケーションを取られていますか。

糸井 はい。ご飯に行きました。キャンプ前だったので多少は野球の話もしましたけど、あとは……ヒミツです(笑)。

──キャンプインの際、キャプテンとして何か声は掛けられたんですか。

糸井 糸井「キャプテン糸井です」と言ったら、ちょっとクスッと笑われたんですが、「僕はこのメンバーで優勝したいです!」と言いました。

──今年のスローガンは「輝氣2015 輝こう、一緒に。」です。

糸井 えっ、そうなん!?(笑)

──はい(笑)。みんなで輝くために、どのようなシーズンにしたいですか。

糸井 もうね、Bs spirits(ビーズスピリッツ※1)ですよ! ほんまにこのチームで、このメンバーで優勝したいという気持ちがあるので。それはファンの皆さんも一緒やと思うし、昨年流した悔し涙を今年はうれし涙にみんなで変えられるように、死ぬ気で戦いたいと思います!
※1「もっと、ひとつになりたい。」と強く願うオリックス・バファローズの選手たちから発案されたムーブメント。選手たちとファンとの一体感を表す「Bs spirits」という“象徴”を掲げ、想いを共有することで、同じ夢へと向かい、一緒に戦っていくことを約束するもの

森脇監督が語る糸井嘉男を主将に選んだ理由


 若手の台頭がないとチームの活性化はないし、総力アップもない。ただ、ウチのチームには、若手の台頭よりも中心選手の意識の向上が必要。そういう意味で、昨年は坂口(智隆)が非常によくやってくれたと思います。今年はメンバー構成も変わりましたし、嘉男が一番適任だと思ったのでキャプテンに指名しました。実際、彼はキャプテンとしてすごい資質を持っている。自分のスタイルを確立させてガンガン引っ張っていってほしいですね。


PROFILE
いとい・よしお●1981年7月31日生まれ。京都府出身。右投左打。187cm88kg。宮津高から近大を経て、04年ドラフト自由獲得枠で投手として日本ハムに入団。06年に外野手に転向すると、徐々に頭角を表し09年にレギュラーに定着。同年にゴールデングラブ賞(6回)とベストナイン(4回)を初受賞した。13年に交換トレードでオリックスに移籍しWBCに出場。09年から6年連続で3割台を記録している。昨季成績は140試合、502打数166安打19本塁打81打点、打率.331。自身初の首位打者、2年ぶり3度目の最高出塁率のタイトルを獲得。

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