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2017ニューヒーロー伝説

巨人・小林誠司 日本の正捕手、巨人の正捕手へ

 

※成績は4月10日現在、写真=大泉謙也


 グッと精悍さが増して見えるのは、丸刈りにしたからだけではない。この春、第4回WBCで日の丸を背負い、世界と戦った小林誠司の表情には、自信が漲っている。

「WBCでは、なかなかできない経験をさせてもらいました。この経験を成長につなげていきたいです。ただWBCはもう終わり。(今度は)リーグ優勝、そして何としても日本一になりたい。いまはもう、その気持ちしかありません」

 巨人は開幕から5連勝スタート。3カード目の阪神戦[甲子園]こそ1勝1敗(1試合の雨天中止)としたが、8戦を終えて6勝2敗の2位と好位置につける。特筆すべきはチーム防御率で、2.57はリーグトップ。まだ対戦がひと回りしていない段階とはいえ、昨季は同3.45と苦しんだのだから、ディフェンス面の充実こそが、好調の要因に挙げられる。これには層の分厚い投手陣の奮闘はもちろん、全試合先発マスクをかぶり、彼らをリードする捕手・小林の存在も無視することはできない。

「長いシーズンなので1試合、1試合の積み重ねだと考えています。まず目の前の試合に勝てるように、考えながらやっていきます」


 WBCを経て、取り巻く環境が劇的に変わった。昨秋に行われたメキシコ、オランダとの侍ジャパン強化試合では、目前に迫ったWBCについて問われても「いや、僕は……」と招集されること自体、否定的だったことがウソのよう。確かに2月23日の直前合宿スタート時点では、嶋基宏(楽天)、大野奨太(日本ハム)に次ぐ3番手捕手の位置付け。ただ、ここから評価はうなぎ登りだった。

 長年、侍ジャパンのキャプテンを務めてきた嶋の故障離脱もあり、練習試合等への出場機会を得ると、「ディフェンス面では安定感がある」と小久保裕紀監督の心をつかむ。周囲の見る目を一変させるきっかけとなったのは、“声掛け”だろう。1次ラウンド第2戦・オーストラリア戦の5回、一死満塁で浮足立つマウンド上の岡田俊哉の下に駆け寄って言葉を掛けたシーンが、この大会の1つのハイライト。冷静さを取り戻した岡田がこれを抑えたことで、絶妙な間合いでタイムを要求した小林の判断が絶賛された。その後の活躍はご存じのとおり。意外性のある打撃も披露し、ドジャー・スタジアムでの準決勝まで全7試合で打率はチームトップの.450、1本塁打、6打点。幾度となく攻守で良い流れを呼び込み、1次ラウンド突破さえ危ぶまれたチームの準決勝進出を支えた。

 これらの活躍に「事前の準備の賜物」とうなずくのが日本代表でもバッテリーコーチを務めた村田善則コーチだ。小林はプロ1年目(14年)は全試合一軍に帯同したものの、2年目の大半を二軍暮らし。3年目の昨季は阿部慎之助の一塁専念もあり、12球団で唯一規定打席に到達した捕手となったものの、数多くの課題を残し、チームも2年連続のV逸。このオフ、阿部のグアム自主トレに志願して弟子入りしたのも・・・

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