アマチュア時代を含めたその長いキャリアの中で、数え切れないほど多くの球場でプレーしてきた。その中には、MLBで過ごした4年間も含まれる。球界最年長野手が感じてきたそれぞれの球場での思い出、そして、これからの球場に求めるものとは──。 取材・構成=杉浦多夢、写真=内田孝治、榎本郁也(インタビュー)、BBM メジャーで体感した繊細なフィールド作り
現役のNPB選手の中で、この男ほど“球場”を語るのにふさわしい選手はいないだろう。今シーズンでプロ生活21年目を迎えている井口資仁。ダイエーから始まったプロキャリアは、アメリカン・リーグのホワイトソックス、ナショナル・リーグのパドレス、フィリーズを経て、ロッテにたどり着いた。MLBの両リーグ、NPBの交流戦を含めれば、数多の球場でプレーしてきたことになる。球場とともに胸に刻まれた思い出から、MLBとNPBの球場における違いを肌で知るがゆえに、未来の球場へ求めるものまで、すべてを語り尽くしてくれた。 ──アマチュア時代を含め、これまで数多くの球場でプレーされてきましたが、思い出に残っている球場と問われると、どの球場になるのでしょうか。
井口 ファンとしてはアメリカで言えばフェンウェイ・パーク(レッドソックスの本拠地)とか、リグレー・フィールド(カブスの本拠地)といった伝統ある球場が面白いのかもしれないですけど、選手としては自分が本拠地としてプレーした球場になりますね。その中でもホワイトソックスの球場(ギャランティードレイト・フィールド、当時はUSセルラー・フィールド)。グラウンドキーパーの方と一緒に話し合いながら、自分の守りやすいようにフィールドを作ってくれていたので、そういう意味では思い出がありますね。
──2004年オフにダイエー(現
ソフトバンク)からMLBのホワイトソックスに二塁手として移籍しました。最初に感じたメジャーの球場のイメージはいかがでしたか。
井口 もちろんやっぱり天然芝ですし、どういうゴロが飛んでくるのかな、というのはありましたね。でも、開幕の前日にアリゾナから帰ってきて、すぐに開幕戦だったので。球場で練習したっていう記憶がない。いきなり本番で。これがアメリカか、みたいな(笑)。ただ、最初からすごく守りやすかったですけどね。
──グラウンドキーパーの方と話し合いながら一緒にフィールドを作るというのは、具体的にどういったことなのでしょう。
井口 選手によっても、ポジションによっても、水のまき方一つも違うんですよ。芝の長さのカットだったり。そういうことをすべて選手に声を掛けて意見を聞きながらやってくれるんです。ほかにもフィールドの中に工夫をしていく。例えば、「三塁線はセーフティーバントをしたら戻ってくるようにしてあるから」とか。見た目では分からないけど、芝の微妙なカットで転がすと切れないようにしてあったりする。もちろん、そのことをホーム側の選手たちだけ分かっているから、ホームアドバンテージになる。そういうのがフィールドの中に隠されているんですよ。
──対戦相手や試合ごとに計算してフィールドを作っていく。
井口 そうなんです。当時のヤンキースやレッドソックスとか強打者ぞろいのチームとやるときは打球の勢いが殺がれるように芝を長くして、簡単には内野の間を抜けないようにしたり。足を使ってくるチームのときは、一塁付近の土を柔らかくして走りにくくしたり。さっきの水のまき方にしても、「今日はもしかしたら雨が降るかもしれないから、少な目にまいておくね」とか、グラウンドキーパーの方がいろいろな工夫をしていましたね。
井口が最も思い出深い球場として挙げるのがホワイトソックスの本拠地ギャランティードレイト・フィールド(当時はUSセルラー・フィールド)。グラウンドキーパーの熟練の技もあって二塁手のポジション付近は“井口仕様”に整備されていた/写真=Getty Images
──井口選手としてはどういうグラウンドが好みだったのですか。
井口 まずは硬さですね。僕は硬いのは好きじゃないので、柔らかくしてもらっていました。その上で、水はたくさんまいてもらう。そのほうがイレギュラーしないので。
──メジャーで球場ごとのグラウンドの違いというのは。
井口 やっぱり暖かいところと寒いところでは芝質が違うんですよ。寒いところでは太くて力強い芝なんですけど、フロリダとかだとゴルフ場みたいな、短くて毛の細い芝です。だから球場ごとにポジショニングなどの守り方は少し変えていましたね。とは言っても、メジャーの球場はどこも芝がきれいに手入れされていたので、あまりイレギュラーしたっていう記憶はないですけどね。
──やはり日本の球場とは違いがありましたか。
井口 本拠地だった福岡ドーム(ヤフオクドーム)も今のマリン(ZOZOマリンスタジアム)も人工芝ですからね。あんまりグラウンドごとにどうこうというのは考えたことがないですね。ただ、今の日本の人工芝は進化しているので、意外と守るのが・・・
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